2015年10月31日

ファイカスの仲間 その2. そのモンスターを庭にうえるのですか?  ウィーピング フィグ(ベンジャミン)



前回、前々回の投稿も見てね。




前回に続き二番目のファイカスは、ウィーピング フィグ。日本では鉢植えの観葉植物になってベンジャミンと呼ばれています。

前回のインディアン ローレル フィグ同様、奇跡的に丈夫な木で、巨木になるポテンシャルを秘めています。
でもちょっと見た目は、柔らかな感じです。
2015年8月9日 Cypress, CA

外側の細い枝が枝垂れているせいで、インディアン ローレル フィグのかっちりした丸い樹冠と違って、例えるなら、毛の長い犬がモシャモシャしているのと同じような感じがします。


名前のこと、特徴など


学名:   Ficus benjamina(フィクス ベンジャミナ)
英語名:  Weeping Fig(ウィーピング フィグ), Weeping Chinese Banyan
日本語名: ベンジャミン、シダレガジュマル、ベンジャミンゴム
原産地: インド、マレーシア

学名の benjamina、日本語名のベンジャミン は共に、インドでファイカスの仲間の木をさす言葉 “バンヤン”から来ているらしいです。

英語名のWeeping は枝垂れた枝のことをさしています。



白い幹と明るい緑の樹冠。モシャモシャしている。
2015年8月9日  Rome Ave. Cypress, CA




葉は、特徴のある先が尖った形。インディアン ローレル フィグよりも色が明るく、厚みは薄いです。
2015年8月8日  Artesia Blvd. Cerritos  CA


落ち葉も先が尖っている。
2015年8月8日  Artesia Blvd. Cerritos  CA



庭木になってる!


このページの冒頭の写真は個人の庭で見つけたウィーピング フィグです。住宅街を走ってみると、この木は本当によく庭に植えてあります。



下の写真は、植えたまま伸び放題という感じ。
2015年8月13日  Long Beach  CA


ぐっと刈り込んでいる家もあります。
2015年8月9日  Cypress, CA




この破壊ポテンシャルの大きい木を、なんで庭に植えるのでしょう。まあ、始めは大きくないので、深く考えずに植えてしまったのかもしれません。



昔の思い出話をご紹介します。

子供たちが小さかったときに借りていた家は、左右両方の家の前庭にこのファイカス(ウィーピング フィグ)が植えてありました。

我が家は、きつい西日がキッチンの窓に入るのをさえぎる為に、庭にミカンの木を植えましたが、なかなか大きくならなくて、結局、当初の目的の日除けにはならないままでした。ミカンは採れましたけど。

同じような間取りの家が並んでいる一角だったので、左右の隣人はきっと我が家と同じ日除けの為に、成長が速くて葉がよく繁るファイカスを選んだのでしょう。若い木でしたが屋根の高さくらいにはなっていたと記憶しています。

一方の隣人がある日、前庭で一家総がかりで何かをしていました。きいてみると、木の根が排水管に侵入して流れが悪くなったので、機械を借りてきて排水管の内側から根を切る作業中ということでした。

管から引きずり出した根を見せてもらいましたが、根のかたまりは小さな灌木ぐらいもありました。ファイカスの仕業でした。隣人が言うには、始めは排水管の極々細い隙間から、水を求めて細い根を侵入させるのだそうです。


こんなことが、あちらでもこちらでも起こっているのでしょうか。木を植えるというのはこういう不都合も一緒に受け入れるということなのでしょうか。そうかもしれませんが、ファイカスのようなモンスターを、排水管が近くにあるようなところに植えたらだめですよね。




このウィーピング フィグは、簡単に苗木が買えます。

下の写真は、Home Depot という、ホームセンターのウィーピング フィグのセクションです。大きいのや小さいの、葉の縁が白いのもありました。
2015年10月21日  Home Depo, Cypress CA


Weeping Fig と書いてあります。



12インチは鉢のサイズでしょう。 約32ドル。



小さい庭には植えるなとか、注意書きくらいつけておいた方が良いと思うのですが。

インディアン ローレル フィグは、売っていませんでした。




本当の街路樹にはなっていない


庭の話が長くなりましたが、もっと広い道路に出て車を走らせると、インディアン ローレル フィグもウィーピング フィグも、どちらも普通に良く見かける木です。さらに見慣れてくると、この二つの種類の植えてある場所の違いが見えてきました。

インディアン ローレル フィグは街路樹になっていますが、このウィーピング フィグは、本当の街路樹になっているのは(少なくとも私の活動範囲では)見ません。

“本当の街路樹じゃない” というのは、道路に沿って並んでいるけれども、実は敷地に沿って植えてある木のことです。つまり、ショッピングセンター沿いとか、ビジネスパーク沿いとか、学校沿いとか。なのでその敷地が終わると並木も終わり、長く続きません。インディアン ローレル フィグの並木が長々と続き、圧倒的な効果でその道路の雰囲気を作っているのとは対照的です。



近所にちょうどいい並木があったのでGoogleの写真をお借りします(Googleの決まり事を忘れた訳ではないのですが、もういいじゃん)
あまり大きくないです。若い木なのかな。
2015年 Google Street View  W. Ball Rd. Anaheim



同じところの、私の撮った写真。
2015年10月30日  Ball Rd, Anaheim  CA




さらに、この場所を空から見たところ。
横に走っている道路の下側に並んでいる丸々がウィーピング フィグの並木です。
2015年 Google Street View  W. Ball Rd. Anaheim
ぎっしり並んでいる長方形の家は、モービルホームというタイプの家で、ここは、モービルホームパークと呼ばれる集合住宅です。そこの前だけに植えてあります。




ウィーピング フィグが本当の街路樹になっていないのは、もしかしたら、インディアン ローレル フィグ先輩があまりに大きなトラブルを起こしたせいで、巻き添えで市の街路樹リストから外されたのかもしれません。

街路樹を植えるのは、だいたい市(郡とか州のこともあるかも)だと思います。そして、街路樹じゃない方はそれぞれの敷地の所有者のはずです。そういった敷地内でもトラブルは起こっているとはずですが、なぜこんなにあちこちに植えてあるのかしら。本数が少ないのと、税金で対応する訳ではないので適当にやっているのかな。

(もちろん、インディアン ローレル フィグが “本当じゃない” 街路樹になっていることは、全く普通にあります。)




その他にも、こんなところに、こんな風に


下の写真は、ビジネスパークの中です。建物に沿ってウィーピング フィグが植えてあります。
さらに、後ろの方に塀に沿ってインディアン ローレル フィグが見えます。
2015年8月8日 Artesia Blvd. Cerritos CA

こんなに建物や塀にくっ付けて植えて大丈夫なのと思うのは素人なのかしら。



トピアリーという刈り込んだ形。これは、まあ、かわいいキャンディー型。
2015年9月28日 Knott St. Garden Grove, CA



こちらは、かわいくないトピアリー。
2014 Nov. Google Street View  Orangethorpe Ave. Buena Park CA






以上、本当に、どこにでもあるウィーピング フィグでした。





2015年10月20日

ファイカスの仲間 その1. モンスターは飼いならせるか、インディアン ローレル フィグ(ガジュマル)



イントロとしての前回のエントリーも見てね。

ファイカスの街路樹として一番よく見かけるのは、インデアン ローレル フィグ。日本語名はガジュマル。

白い幹と緑の葉が明るく陽に映え、葉が密に繁っているのに重々しい感じがしません。
2014年2月3日 Woodruff Ave. Lakewood, CA


上の写真を撮った ウッドラフ通りは、このファイカスの街路樹が長々と続く道路です。両脇に側道があって広々としているのに交通量はそれほど無く、走ると気持ちがいい道です。


同じウッドラフ通り。右が側道。この側道は、ファイカスのおかげで日陰が多く、車をとめるのに良さそう。
とにかく陽射しが強烈なので、冬でも日陰があったらうれしいのです。
2014年2月3日 Woodruff Ave. Lakewood, CA




グーグル車から撮った、同じくウッドラフ通りです。ずっと向こうまでファイカスの街路樹が続いています。
ほんと、街路樹の写真は車の目線で写すのが一番ですね。
Google Street View  2015年8月 Woodruff Ave. Lakewood, CA




名前のことなど

クワ科(Moraceae)、イチジク属(Ficus)

学名: Ficus microcarpa(フィクス ミクロカルパ)
   ミクロカルパは、小さい果実の意 
英語名Indian Laurel Fig(インディアン ローレル フィグ), Laurel Fig, Laurel Rubber, Chinese Banyan
日本語名ガジュマル
原産:マレー半島、ボルネオ



ウィキペディアによると日本語名のガジュマルは沖縄の地方名とのこと。また、沖縄の伝承としてガジュマルの大木にはキジムナーという妖精住んでいるのだそうです。 

確かにガジュマルという言葉には、熱帯の水分をたっぷり含んだ空気と、妖精が住むような魔術的なイメージあります。

でも、乾燥した南カリフォルニアで車の排気にさらされながら道路ぎわに並んでいる巨木たちには、妖精なんて近寄りもしないでしょう。

なので、ここでは日本語名では呼ばずに、長い名ですがインデアン ローレル フィグにします。人工的な感じの名前がかえって相応しいかも。(他の種類との混乱が無いときにはファイカスと呼ぶかもです)。


ちなみに、“ガジュマル” で画像検索をすると、気根を無数に垂らした魔術的な大木の写真が見られます。ところが “Indian Laurel Fig” だと、街路樹の写真が多くでてきます。面白いですね。



果実、葉、幹

名前のとおり、小さなイチジクの形をした果実がつきます。鳥や小動物の餌になるそうです。

木の下には、いつ行っても実が無数に落ちていました。

2014年2月4日 South Ave. Lakewood, CA


葉っぱも、小ぶりです。

(大きさの比較が分かるようなものを置いて写真を撮るべきですよね)
2014年2月3日 Woodruff Ave. Lakewood, CA

家に持って帰って写した写真

2014年2月3日


別のところのインディアン ローレル フィグ。
葉っぱの形がちょっと違う。
2014年2月4日

どうも、カリフォルニアの街路樹になっているインデアン ローレル フィグには、二つの亜種があるようです。葉の形が多少違っていたり、少し枝垂れたのや、枝垂れていないのがあるのはどうもそのせいだと思います。

ただ、街路樹としての外観は同じにみえるので、ここでは違いは追及しないことにします。


幹。
原産地では、枝から無数に気根が垂れ下がり、本来の幹や枝がどうなっているのか分からない程になっていますが、カリフォルニアのファイカスでは気根を見ないのは、気候が違うからなのか、それとも剪定をしょっちゅうするからなのか、どちらでしょう。
2014年2月4日 South St. Lakewood, CA


足元は何だか狭苦しそう。
根が道を持ち上げたり下水管を壊したりしない様に相当お金がかかっているらしいです。
2014年2月4日 South Ave. Lakewood, CA




トラブルも、木の大きさと同じくらい大きい ーーふたつの新聞記事から

ロサンゼルスの新聞、Los Angeles Times の古い記事がネット上で見つかりました。20年ほど昔の記事ですが、現在も同じことが進行中と思いますので、適当に紹介します。


Ficus' Shady Reputation Prompts Change in Scenery
March 13, 1996  Larry Gordon, Times Staff Writer

タイトルは、“ファイカスの悪評が景観の変更を迫まる”。もうちょっと詩的に訳せたらいいのですが。

ここで言うファイカスは、インディアン ローレル フィグ のことで、記事ではこのファイカスのことを、very very hardy、あるいは miracle tree と表現しています。つまり奇跡的にものすごく丈夫ということです。

汚れた空気の中でも、あるいは、まともに世話されなくても、さらには高層ビルの陰で陽に当たらなくても、過酷な都会で元気にそして美しく育つのだそうです。

このファイカスは、1950年代末から1960年代初めにカリフォルニアで集中的に大量に植えられたのだそうです(具体的な数は書いてありませんが)。

そして、成長が非常に速い木なので、たちまち常緑の樹冠が通りを美しく飾り、カリフォルニアのエレガンスや豊かさのイメージの中に溶け込んで行ったのでした。

けれども、何ごとも良いことばかりでないのが世の常で、木が育つと共に、歩道を持ち上げたり、下水管を壊したり、道路標識や看板を隠すという問題が起こってきました。また、剪定にもかなりの費用がかかるのだそうです。

そんなこと、植える前から分かりそうなもんですが、たぶんトラブルの大きさが予想外だったということなのでしょう、想像ですが。

この記事の書かれた1996年の時点で、すでにカリフォルニアの多くの市がファイカスを大量に除去しており、また、新しく植えられることも少なくなっているのだそうです。

また、道路沿いに小売店やレストランが並ぶようなRetail District と言われる地区には、ファイカスの街路樹があることは珍しくないのですが、こういうところではファイカスを除去するか、高い経費をかけて維持するか議論が持ち上がるのが常なのだそうです。

個性ある店舗群と共に、ファイカスの存在がその地区のイメージを作り上げておりお客さんを引き付ける重要な要素になっているのです。

維持するためには、地下に張った根を切ったり、根が広がらないようにする障壁を埋めたり、歩道を補修したりしなくてはなりませんが、こういう対策が実際に効果があるのか、あるいは木を弱らせないか、確かなことは分からないのだそうです。

その話題に関して、ここに、2013年3月の日付の記事があります。
地元紙、オレンジ カウンティ― レジスター(Orange County Register)です。

Ficus trees spark debate in Seal Beach
March 23, 2013

タイトルは、“シール ビーチでファイカスを巡る議論の火花が散る”。

Seal Beach市は、オレンジ郡の北部にある海沿いの小さな町です。我が家から最も近い海がここなので、海沿いの散歩にでも行こうかというときはここに出かけてゆきます。

そして、海岸に突き当たる小さな通りが メイン ストリート(Main Street)といって、古くからあるレストランやアンティークの店などなどが並んでいます。ここが記事に取り上げられているファイカスの論争の火花が散っているところです。

記事によると市議会は、メインストリートにファイカスを25本、ファイカスじゃない古い木に替えて植えることを決議したというものです。均一な街路樹で通りを美化し、集客力のある地区を更に魅力的にしようというものです。けれども、市長は猛反対で、まだ変更の可能性があると一歩も引かない構えなのだそうです。

それからどうなったのかは知りませんが、久しぶりに海の散歩に行きがてら、メインストリートの街路樹ウォッチングをしてきました。



メインストリートで街路樹ウォッチング


まず、Google の写真から。小さなお店やレストランが並びます。ファストフード店なんてないですよ。レストランは、よくお客さんが入っています。
2015年2月 Google Street View Main St. SealCA Beach, 
手前のファイカスが目立ちますが、奥の方は違う木です。市長さんの主張が通ったのかしら。


メインストリートは、中央通りなんて意味ですが、名前に似合わず小さい道です。街の始まりの昔にこの辺が中心だったのかな。


ファイカスだけが入るように写しました。同じ木が続く魅力的な通りに見えるでしょうか。
2015年8月7日 Main St. Seal Beach, CA

ピンボケですみません、もうすぐ日が暮れる夕方です。ファイカスはかなり細目に形造られている。
2015年8月7日 Main St. Seal Beach, CA

通りの向こう側に、ファイカスじゃないのが並んでる。
2015年8月7日 Main St. Seal Beach, CA




最後に、木が写ってない写真を。
メインストリートにつながって、海に伸びるピアです。メインストリートより歩いている人が多い。
2015年8月7日 Seal Beach Pier, Seal Beach, CA



以上、インディアン ローレル フィグでした。






2015年10月17日

ファイカスの仲間の連続投稿を開始する...つもり



樹木ウォッチングを始めたばかりの頃にファイカスの仲間を取り上げたのですが、超初心者だったため内容的にほぼ破たん状態でした。

気になりつつ、今回やっと書き直しエントリーを始めます。前のはそのうち削除するつもりですが記念に残しておくのもいいかも。




私の住んでる辺りでファイカスといえば、こんな街路樹が思い浮ぶはず。
2014年2月3日 Woodruff Ave. Lakewood, CA
Ficus microcarpa(ガジュマル)



それから、こんなのも。
2015年9月28日 Knot St. Garden Grove, CA
Ficus Benjamina(ベンジャミン




英語でファイカス(ficus)というと、大雑把にイチジク属(Ficus フィクス)に属する大木を指すみたいです。

ただ、イチジク属なら何でもファイカスと呼ぶ訳でもないようで、同じ仲間のインドボダイジュやゴムノキはファイカスとはいわないような気がする。

一方、果物のイチジクがなるイチジクの木は、フィグ ツリーと呼ばれているはずです。フィグ(fig)はイチジクの実のこと。でも、ファイカスの大木のことをフィグ ツリーと称することも目にします。

とにかく、総称や一般名を詮索するのはこれ以上は止めておきます。学名とは違って決まりがないからです。



さて、これから私の活動範囲で見かける四種類のファイカスを紹介してゆくつもりです。都会の森の大型構成員です。

上の写真の二種類に加えて、以下の二種。
  • Ficus rubiginosa  (フランス ゴムノキ なんて日本語名がついている)
  • Ficus macrophylla  (日本語ではオーストラリアゴムノキ。超巨木です。街路樹ではないけど、時々見かける)

まとめて全部を一つのエントリーするか迷いましたが、後で参照するのにかえって混乱が起きそうなので一種類ずつにします。


また、以前のファイカスのエントリーでは種類の見分けをゴニョゴニョ迷っていたのですが、今回、正確さのレベルの低さを、それで良しとすることに決めた上での書き直しです。この自覚は樹木ウォッチャーとしてなかなかの進歩だと思っているのですよ。



最後に、ファイカスを含むイチジク属の共通の特徴である果実について、ウィキペディアの記事が分かりやすかったので引用です。
共通の特徴は、その特殊な花序にある。イチジク無花果と言われるように、この仲間は、花が咲かずに唐突に果実を生じるように見える。もちろんそんな訳はないのであって、実際には果実に見えるものが花序なのである。

では、予告編おわり。




2015年7月29日

ユーカリからしばらく離れよう...(言い訳エントリー)




悩めるユーカリマニアです。
これまでで、ユーカリの中で名前がおよそ分かるようになったのは、ブルーガムレモンユーカリレッド フラワリングガムレッド アイアンバーク の四種。レッドガムは、もう少し。

けれども日々運転していて、当たり前のように目に入る背の高い種類のユーカリ達はほとんど分からないままになっています(レモンガムとブルーガムは背が高いですが、まあなんとか)。


下の写真は、我がアパートのゲートを出た真正面に立つユーカリ。毎日、毎日見ていますが分かりません。どうやったら分かるのかさえ、分かりません。
2015年4月20日 Cypress Community College, Cypress, CA




以前に自分で決めたことですが、“木の名前が分かったと言えるのは、木の佇まいに馴染んで全体の感じが掴めるようになってから” という基準に則して樹木ウォッチング進めてきました。まあ、それぞれの種類に事情があって全くこのとおりにはいきませんが、だいたいこの方針で来ました。

で、ユーカリとなると、離れて眺めてユーカリの仲間だとは分かるんです。何か独特の雰囲気があるのですよ。背の高い木々が、“下界の事なんか知ら~ん” という感じで上の方でよろしくやっているように見えるのです。

なので、 “ユーカリの仲間” ということで括って済ませるのもありかも知れませんが、ちょっと種類が多すぎなので、できれば何とか個別に分かりたいと心から願っているのです。

にもかかわらず、毎日背の高いユーカリを眺めて “分からん...” と思うことが習慣になってしまい、いつの間にかこのブログさえ放置することに相成りました。それではとてもイカンので、この際、しばらくユーカリのことは置いておくことに決めました。少なくとも花が咲き始める秋までは。


で、今回は分からないことの言い訳エントリーです。というか、自分のための経過の記録。



隣のコミュニティ カレッジ で 植栽の手入れをしている人にきいてみた


隣のサイプレス コミュニティ カレッジ は、私のツリーウォッチングの大事なフィールド。ユーカリが、少なくとも7~8種類、もしかしたら10種類以上あると思うのです。あるとき、今年の一月ですが、働いている人を見つけました。


クレーンの先端に、コンテナに乗った人がいて枝を払っています。
2015年1月22日 Cypress Community College, Cypress CA



見えないけど人がいるんです。
2015年1月22日 Cypress Community College, Cypress CA


根元には枝が山積み。
葉の匂いから明らかにレモンユーカリではないし、花と実はブルーガムじゃない、レッドガムじゃない。だから分からない。
2015年1月22日 Cypress Community College, Cypress CA

木の下にも人がいたので、意を決してきいてみたのですよ。私は人見知りで、英語も滑らかではありません。

“ハイ、高い木ねー、クレーンは随分上まで届くのね?”  とか、気楽なふりして話しかけました。メキシコ人風の労働者のお兄さんでした。

私:       この木の名前なんて言うの?
お兄さん1: ユーカリ。
私:       どんなユーカリ?
お兄さん1: 知らない。
私:       あーそなの。ありがとう。気を付けてね。

何となく、危ないから離れていてほしいと思ってる雰囲気があったので、それで終わり。

近くに、別の木に登ろうとしているお兄さんがいたので、こちらでもきいてみました。彼はクレーンを使わずに、幹にベルトを掛けそれを自分の腰に回し、脚を使って登るようです。なかなかの技が要りそうだし、危なそう。

私:       この木の名前なんて言うの?
お兄さん2: ユーカリ。
私:       どんなユーカリ?
お兄さん2: レモン。(レモンユーカリのこと。お、種類を言ったゾ。)

でも、さっきの木がレモンじゃないと確かめたばかりだったので、“レモンじゃないよ” と、偉そうに言ってしまったのです。
      
お兄さん2: あっ、そ。(少しも気にせず、登る態勢を整えている)

私は、何歩か歩いてから考えなおして、その木の下の落葉を拾い半分に折って匂いを嗅いでみました。何と!紛う方なきレモンの香り。お兄さん間違ってなかった。

ちょっと迷ったけど、ここでしらばっくれる訳にはいかないので引き返した。

私:       あんたが正しかった。レモンだった。(折った葉っぱを差し出す)
お兄さん2: あっ、そ。(少しも気にせず、登り始める)


このユーカリが立っている建物の前には、5~6本のユーカリが植えてある。まとめて植えてあるなら同じ種類だろうと思ってしまうじゃないですか。一本がレモンユーカリじゃないなら、全部そうじゃないと思うし、ぱっと見た目もそう見える。


以前に撮ったその場所の写真です。手前から3本目あたりが、当のレモン。奥の方がクレーンで剪定していたやつ。
2014年7月5日 Cypress Community College, Cypress CA


植栽としてまとめて植えてあったら、全て同じ種類だと思ってしまいそうですが、必ずしもそうではないと知りました。

思い出せば、まとまった植栽の中に種類の違う木が混じっていたことはシカモアや、バウヒニア、あるいはワシントンヤシで経験済みです。植木を出荷するときに似たのが間違って混じったのか、素人の私には計り知れない訳があるのか。ま、そういうこともあるから早合点には気を付けよう。

知ったかぶりを恥じながら早々に立ち去りました。


さてさて場所を移動すると、今度は白人のおじさんが一人で、チェーンソーのような道具で生垣のてっぺんを平らに刈りそろえていました。

彼もユーカリとしか答えられませんでした。どこに行ったら分かるか尋ねてみましたが、にべもなく知らないと言われてしまいました。

たぶん、カレッジのオフィスに行けば担当部署なり敷地内の植栽の地図なり、何か手がかりがあると思いますが、好奇心を満たしたいだけの私としては気後れを感じます。いずれチャンスがあったら、ということで。



頼りになる資料が無い


例えば、いつもお世話になっているUFEI (Urban Forest Ecosystems Institute のこと。カリフォルニアの州立大学に所属する)ではどうかというと:

UFEIの樹木検索のページのボックスに eucalyptus と記入して search をクリックする
と、今日現在で44種類の “いわゆる” ユーカリの仲間の名前が列挙されます。これがカリフォルニアにあるユーカリの顔ぶれなのでしょう。

各名前からそれぞれの種類の写真や説明があるページにつながります。

よほど特徴ある花や果実がついている種類の名前を探すときは、私のようなレベルなら、ここの写真と一致したら決まりでいいことにしています。例えば、レッドフラワリングガムとかブルーガムはそうやって決めました。

でも、背の高いユーカリ達には、たいてい地味な花や果実が付いているのですが、ここには網羅的に写真が載っているわけでもないので、種類を決める手がかりが掴めません。名前の分かっているユーカリを確認するのにはいいと思います。


ユーカリの本場オーストラリアではどうかというと:

ざっとさがしたところでは、有料の資料があります。

ハードカバーのフィールドガイドは 289 ドル。

DVDの形で売っている Euclid というものは849種類のユーカリの検索ができるらしいですが、なんかヘン。2006年バージョンが最新で、Windows 98からXPで動くなんて書いてあります。今や、XPも過去のものですよね。
Euclid のサンプルはネット上で見られます。それなりに参考になります。

とにかく、オンラインで、無料で本当に分かる検索ができるサイトを見つけていません。私の近場では図書館にもありません。



背の高いユーカリは、たいてい近づけないところに植えてある


例えば、以下の写真のような花や果実がついているとレッドガム(たぶん)だと分かります。

蓋の付いた花のカプセルと、花が落ちた後の様子。
2014年11月22日 採集地 Los Alamitos CA 

もう種が落ちてしまった古い果実。
2014年11月22日 採集地 Los Alamitos CA


この花や実は、ここで採集。


2014年11月22日 Los Alamitos Blvd. Los Alamitos CA

大通りの横にある幅の広い側道で、さらに、ほとんど人通りが無かったので、思う存分ウロウロ出来ました。
2014年11月22日 Los Alamitos Blvd. Los Alamitos CA

でも何というか、木の感じが全然つかめないので、私の基準ではレッドガムが分かったことにはなりません。


もっとあちこちで、レッドガムかもしれないと思ったら、近寄って花や実で確認できたらいいのですが、上記の写真のような場所は滅多にあるもんじゃないのです。

車を止められないような道路沿い、フリーウェー沿いが、主として背の高いユーカリが植えてある場所なのです。



さあ、どうしようかな。

今のところ考えているのは、ロサンゼルスの Elysian Park という公園にある植物園には レッドガムを含めユーカリ がたくさんあるそうなので、花の咲くころに行ってみようと思っています。

そこで、木の全体の佇まいが把握できるか、そしたら遠くからみても種類が分かるようになるか。まあ、遠くの種類が分かっても、確かめに行けないのですけどね。


ユーカリの悩みの途中経過でした。


2015年5月18日

街が似合うユーカリ、レッド アイアンバーク (Red Ironbark、Eucalyptus sideroxylon)



ご無沙汰です。ユーカリシリーズを続けて行きます。

ところで最初にお断りしますが、ユーカリの仲間、とくに背の高い大型のユーカリは、種類の見分けの確信の程度がちょっと低めです。

そこを何とかはっきりさせたいと、随分長いことだらだらと時を費やしたのですが、自分には無理であると思い切ることにしました。はい、胸を張って言います。素人が一年くらいで到達できるレベルはこれくらいです。

そのうちに言い訳エントリーでも書きますワ。


今回のレッド アイアンバーク(Red Ironbark)は、そんな大型ユーカリの中では小さい方で、そして特徴がはっきりしています(たぶん)。以後(たぶん)は省略。
2014年12月19日 Valley View St. Cypress, CA



写真中央の木が、我が市を南北に走る幹線道路の中央分離帯の植栽になっているレッド アイアンバークです。奥のヒョロい木は以前記事にしたレモンユーカリ。

下の写真も同じ道路で、後方の黒い幹の二本がレッド アイアンバーク。手前の二本がレモン ユーカリ。それぞれ夕日に映えて上の方が赤っぽくなってます。
2014年12月19日 Valley View St. Cypress, CA




誰がデザインしたのでしょう、黒い木と、白い木がお互いを引き立てながら交互に植えられています。

レッド アイアンバークとレモン ユーカリは、私の住む辺りでは街路樹としてごく普通にあります。つまり都会の森の常連構成員。
(レモン ユーカリについては、そのうちまた書くつもりです。)



名前


Myrtaceae(フトモモ科)、Eucalyptus(ユーカリ属)

学名  :Eucalyptus sideroxylon

    (エウカリプツス シデロキシロン)
英語名 :Red Ironbark (レッド アイアンバーク)    
日本語名: 英語名のカタカナ表記、たぶん



Ironbarkの、ironは鉄のこと、barkは樹皮のこと。樹皮が、錆びた鉄のように黒っぽい茶色をしているのでこの名があるのだと思います。
2014年11月27日 Rosecrans Ave, Fullerton, CA

ちなみに、ユーカリでは樹皮が剥がれ落ちる種類が多い中、この木は縦に割れ目が入った硬くぶ厚い樹皮が覆っており、はがれません。それが、この木の目立った特徴になっています。



街が似合うシックな木


写真でうまく写せないのですが、この木は色合いがなかなかシックなのです。
2014年11月16日 Cypress Community College, Cypress CA



黒い幹と、枝垂れて覆いかぶさるような樹冠。全体に暗い感じなんですが、葉がブルーと表現される粉をふいたような青灰色をしていて、黒い幹と際立った対照があります。そして、ローズピンクの花が付くとさらに葉の青みが引き立ちます。秋から冬にかけて結構長い花の時期があり、車で通るたびに目を楽しませてくれました。


花と葉。何となくブルー系。
2014年11月27日 Rosecrans Ave, Fullerton, CA



花が落ちた後のカプセル状の果実。
2014年11月27日 Rosecrans Ave, Fullerton, CA


去年の、熟した果実でしょう。
2014年11月27日 Rosecrans Ave, Fullerton, CA


ユーカリ全般に、果実の形態が種類を見分ける大きなポイントなのですが、レッド アイアンバークでは黒っぽい幹を含めたおしゃれな佇まいが私の見分けポイントになっています。

ただ、残念ながらいつでもシックという訳ではなく、いかにもショボショボしたのもあります。剪定のされ方なのでしょう。伸び伸びと育てられない都会の事情があるのが街路樹ですから。


以上、レッド アイアンバークでした。



2015年5月10日

うわぁ、三ヶ月も放置してた!




前回のエントリーの日付が2月19日なので、もうかれこれ三ヶ月も更新していないことになる。

いえいえ、だいぶ前から気になってはいたものの放置してました。

3月に日本に帰国して認知症の母と数週間過ごしたのはブログから心が離れた理由の一つではあるのですが、時差ぼけと疲労から来る意欲の低下の方が大きいかも。

また、再開します。“ユーカリがなかなか分からない” 問題に決着をつけたいし。

て、誰に向かって書いているんだか。とにかく、頑張れ自分。

2015年2月19日

ひつじ年なので、この写真を



一月はユーカリのことで手一杯で、新年のご挨拶をしていませんでした。
今日が旧暦の一月一日ということなので、遅ればせながら、ご挨拶を。

まず、未年にちなんで、ごく初期のころに書いたブログから、羊の写真を。我がアパートのベランダから見える、ケーブルボックスと消火栓の羊です。







一年ちょっと続いたブログです。

頭の中だけで思いを巡らせることと、それを文章化することの違いに驚いた日々でした。文章を書くことで、考えが一か所にとどまらずに動き始めます。書くという行為そのものが考えを変えるものなのですね。

書くことに慣れていないだけのことかもしてませんが、短い文章でも書き始めてから内容が定まるまで、大げさに言えば、相当な精神労働をしています。大抵それまで思っていたことをご破算にして組み立て直すという作業が発生します。

当ブログは身近にある樹木のことを多くエントリーにしていますが、客観的な情報を本やネットで調べて自分なりに消化して記述し、また自分の目で見た情報や感想を、時におずおずと、時に大胆に付け加えて世間に差し出しています。

そうやって苦労して作った完成品をネットの空間に公開するのは、その時点での果実をピンで止めて標本にしているようなものです。それを眺める私には世間という視点が加わり、更に新しい情報を得たりして、また考えが動き始めます。

なので、エントリーを公開するとき、そういう変化に耐えられるかを考える必要があります。断定的に書かない余裕と、それでも、これが今の私ですと曝す覚悟かな。

まあ、そんなことを心してこれからもぼちぼち続けたいです。

けれども、ブログを書き始めたことで、ぼんやりとした情緒が私から抜け落ちてしまった気もします。以前は、レモンユーカリを “我にもの言う木” として、勝手に心慰められていたのに、今は種類を見極めたい意欲が勝って、心が乾いてしまったかも。この辺も、ちょっと思い出して何とかしなくちゃ。


いずれにしても、読んで下さる方が世界中におられることが大きな喜びです。これからどのように展開するか分かりませんが、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2015年2月1日

フットボールは美しい!シアトル・シーホークスのファンでよかった


きょうは、スーパーボール サンデーでした。

シアトル負けて残念だけど、3時間ぐらいすごく楽しめた! 去年と違って、おおいに興奮できたゲームでした。でも最後の最後でシアトルのQBのウィルソンは、何故リンチにボールを渡さなかったの?これは解説者も口にしていたので、これから色々聞くことになるでしょう。

でも、このエントリーはゲームの内容のために書いているのではありません。私がフットボールが好きなのは、男性美が堪能できるから。そんなこと、私みたいな変な女しか言わないと思うので、そのことを書いてみます。負~けて悔しい、言いたい放題。

フットボールって本当に目の保養なんです。鍛え上げた男性が身体能力と精神力の極限で躍動するのが見られるなんて、テレビのおかげ、アメリカに住んでるおかげ、ありがたや、ありがたや。AKBなんちゃらの女の子達に男性が夢中になるのと似たような心理かしら。

私は、スポーツは見た目の美しさに目がいく方で、例えば、こちらで人気のあるバスケットボールは好きじゃないのです。バスケットボール コートと選手の大きさのバランスが悪いのが気持ち悪いし、ユニフォームも選手を美しく見せてない。野球は、プレーヤーがおじさん臭いから熱心なファンにはなれない。そもそも野球は、見た目を美しくしようなんて思ってないでしょうね。

その点フットボールは、鍛えた体が美しい、動きが美しい、ユニフォームも美しい。それから、汗も汚れも感じさせないのね、この辺が特別なのかもしれない。さらに一人ひとりのプレーヤーが見た目の個性を一生懸命磨いている。美しいに決まっているでしょう!

その中でも、シーホークスは特に美しくて、ユニフォームもいい。その上若々しいのね。実際の年齢も他のチームより若いプレーヤーが多いし、個性が際立った選手が何人もいる。コーチのピート・キャロルはかなりの年輩だけどおじさん臭さがない。その点、今日優勝したペイトリオッツのコーチのベリチックとか、トム・ブレディは、よく言えば思慮深そうだけど、活き活きという感じではない。

美しいこと、若いことにこんなに惹かれるのは、もちろん私が若くないから。私が昔のどっかの女王だったりしたら権力にものを言わせて危ないことをしたかも。


ところで、私のブログのアクセスは、いつもはヤシ関連が多いのだけれど、ここしばらく、昨年のエントリー、“ス ーパーボール勝利、おめでとう!ピート・キャロルとシアトル・シーホークス” にかなりのアクセスを得る異常事態があったのね。

あんな素人の短い記事でもアクセスがあるということは、フットボールは日本語圏であまり人気が無いのでしょうね。というか、人気があるのはアメリカ国内だけか。その点では日本の相撲みたいなものかしら。力士の外見に(ある意味)美を見出しているところとか、一瞬の集中力が強烈なところなど、案外似ているところがあると思っているのですよ。

サッカーはどうかって?すみません、あまり見てないのです。


この後も、懲りずにファンを続けています。良かったら読んでね。

2016年1月11日
シアトル・シーホークスはプレイオフ1勝。イェーイ!!

2015年1月27日

絵を見て泣いた話


もう、三十年くらい前のことなのですが、絵から強い衝撃を受けた経験があって、今回は、そのことを書きます。(チェコ好き)さんという方の記事を読んで、自分の経験を記録したくなったのです。

(チェコ好き)の日記
 2014年12月19日
「好き」「嫌い」をこえた芸術鑑賞法があるとしたら

後半の、「審美眼」とは何か というサブタイトルのところの一部を引用します。
私が考える本当の意味での「審美眼」は、「みんなが同じように美しいと思うもの、だれもが同じように高く評価するもの」を見極める能力のことではありません。「自分のためだけに作られたものが、自分のためだけに発しているメッセージに気付く」能力のことです。
例えばですね、何の知識も持っていない、作品の背景もまったく知らないはずなのに、「好き」とか「面白い」とかいう感情の何百倍も強い引力で、自分に “語りかけてくる” 作品というのがあります。
......... 
 しかし何であれ、それはあなたのための作品です。目が合います。あなたのことを、家族よりも、恋人よりも、友人よりも、その作品は知っています。

あれは多分1980年代の後半、友達とスキー旅行に行った帰途、乗り換えの時間があったので、その場の思い付きで東京上野の国立西洋美術館に入ったのでした。

軽い気持ちで展示物を順次ながめて、その絵の前に立ったとき、まさに見た瞬間に涙が噴き出したのです。友人が一緒だったので、そんな自分を見られるのが恥ずかしく、さりげなくその場を離れ人から見えないところで涙と鼻水を一生懸命拭き、眼を乾かし、その絵の前にはもう戻らなかったのです。

鑑賞する間も無く一目見るなり涙が出たので、絵の詳細は分からないのですが、ルノワールの絵で、白い服を着た女の人が正面を向いた半身像で、胸に白い花を付けていたと思います。帽子はかぶっていなかったように思います。何より、全体的に白い絵だったという印象があります。

その美術館にはそれっきり行っていませんし、その絵が何だったのか未だに分かりません。図書館でルノワールの画集を開いてみたり、インターネットが出現してからはネットで探しもしましたが、それらしいものは見つからないままです。

それでも、私の人生でちょっと突出した出来事だったので、折に触れてあれは何だったのだろうと考えました。あの白い絵が微小なエネルギーを発していて、自分の中にある何かと感応したというのが納得できる解釈でした。私の胸にも絵と同じように無垢な白い花があると想像していい気持にもなりました。が、残念ながら(チェコ好き)さんのいう、“ メッセージ” を発している絵や作者に心が向かず、自分の心の反応だけを見て自己満足の中にずっと留まっていたのです。

そして、ひと月前に(チェコ好き)さんの記事に出合いました。自分の体験が認められたようで、まずは嬉しかったのですが、それと同時に残念でならないという気持ちが、やっと起こりました

あの涙が出た瞬間は、私の審美眼の開眼の瞬間だったのです。確かにそうでしょう、わかります。涙をふきふき見続けていれば、きっと絵が生き生きと私に語りかけたでしょう、そして私は自分をもっとよく知ることができたでしょう。それなのにその場を逃げるように離れてしまったのです。

も、でも、ここまで書いて、なんか分かってしまいました。

絵の前から離れたことが残念でならないと書いたことで、その残念さに本当に胸がじりじりするのを感じ、それから気が付きました。あのとき自分は逃げたんだなと。見たくなかったんだと。そこに見たい自分が無いことがわかっていたんだと。

こういう展開になると、本当は完全に違う構成で書き直す方が一貫性があると思いますが、今は到底そんなことができるとは思えないので、このままにします。でも、もう考察を進める気もなくなっちゃいました。

で、話を戻すと、勇気が無かったのね。

願わくば、もう一度、あの魔法のような瞬間が訪れますように。そのときのために、私は心を澄ませて生きてゆきましょう。勇気とタオルを持って。

これで終わりにします。(チェコ好き)さん、ありがとう。






2015年1月20日

本場じゃないけど、ブルーガム (Blue Gum, Eucalyptus globulus) です



やっとこさ、エントリー三回分かけてユーカリのはなしを書き終わりました。

ユーカリのはなし その1  
ユーカリのはなし その2 
その主役はブルーガムでしたね。

アメリカに於けるブルーガムの本場はベイエリアなのですが、それはいつか見に行くとして、今回は私の近所で見てきた南カリフォルニアのブルーガムを紹介します。やっと自分の樹木ウォッチングの記事が書けます。

アーバン フォレスト(Urban Forest、都会の森?)の木として手なずけられたブルーガムです。


ハートウェル パークという公園の一角に、まとまって数種類のユーカリが植えてあります。そのうち半分くらいがブルーガム。
April 7, 2014  Heartwell Park, Long Beach, CA


同じ公園。手前の二本は間違いなくブルーガム。
January 19, 2015  Heartwell Park, Long Beach, CA





名前

Myrtaceae(フトモモ科)、Eucalyptus(ユーカリ属)

学名  :Eucalyptus globurus(エウカリプツス グロブルス)
英語名 :Blue Gum(ブルーガム), 
     Tasmanian Blue Gum(タスマニアン ブルーガム)
日本語名: なし(英語名のカタカナ表記、たぶん)




日本語でユーカリと総称される種類は、英語では Eucalyptus(ユーカリプタス) あるいは Eucalypts (ユーカリプツ)と呼ばれているみたいです。

これらは、かつては Eucalyptus属にまとまっていましたが、最新の分類では、それをEucalyptus属、Corymbia属、Angophora属の三つに分けています。種類数としては Eucalyptus属が断然多いです。


またユーカリは、まとめてざっくりとGum Tree と呼ばれることもあります。特につるっとした肌をした仲間はGum(樹脂、樹液をさす)を分泌しているのがよくみられます。

こんなふうに。
これは、レモンユーカリ。
November 27, 2014  Rosecrans Ave. Fullerton CA


これはブルーガム。ちょっとわかりにくいですが茶色い丸いところが数か所見えます。枝を切った傷をGum が塞いでいると思います。
January 19, 2015  Heartwell Park, Long Beach, CA



写真のように、披針形、やや三日月型に曲がっている。葉質は硬い。葉先が下向きに垂れて下がる。常緑樹ということだけど、どれくらい葉が長持ちするのかしら、不明。
April 7, 2014  Heartwell Park, Long Beach CA


ユーカリは、大体どれもよく似た葉っぱをしていて困りものなのですが、ブルーガムは大きめです。そして色は、ブルーと表現される灰緑色。上の写真では、縁がギザギザに欠けていますが、どうしてそうなったかは、不明。


枝ごと落ちていました。ユーカリではよくあることだそう。
November 16, 2014 Cypress Community College, Cypress CA

幼樹や、新しい枝に付く葉は、丸みがあります。が、他のユーカリもそういうのが多いらしい。
January 19, 2015  Heartwell Park, Long Beach, CA



花と果実

これまたユーカリ全般の特徴ですが、花は蓋のついたカプセルに入っています。カプセルは、がくと花びらになるはずの部分が変化して出来ており、花に見えるところは沢山のオシベ(とメシベ一本)です。

花が終わったカプセルの身の方は、やがてもうちょっと大きくなり、中に種を宿します。ペッパー シェイカーと表現される果実は、確かにテーブルに置くコショウの入れ物ように、上に出口があってそこから粉のような種を振りまきます。

ブルーガムのカプセルは、有難いことに、他の種類には無いとても分かりやすい形をしています。



今日行ってみた公園で、写真が撮れる高さに花が一つありました。
下から見ています。カプセルの蓋がまだくっ付いていますよ。

January 19, 2015  Heartwell Park, Long Beach, CA


開きかけで、落ちた花。カプセルからオシベがはみ出していて、外れた蓋がそばにありました。カプセルの直径は1㎝ 以上あると思います(測ってこなかった、残念!)


January 19, 2015  Heartwell Park, Long Beach, CA




果実は、短い柄で一個ずつ枝にくっ付いています。去年の4月の写真です。
April 7, 2014 Heartwell Park, Long Beach  CA



一個ずつというのはブルーガムに独特で、他のユーカリでは私が見たかぎりでは複数個付いていました。例えば 下の写真は Red Gum のカプセルです。5個付いています。
November 22, 2014



今日(もう昨日になった)の収穫を見てください。
番号をふってみました
January 19, 2015  Heartwell Park, Long Beach, CA


1.つぼみ、と言っていいのかな。中にぎっしりオシベが詰まっているはず。

2オシベがすっかり落ちたカプセルの身の方。
  上の蓋は、私が適当に拾って置いたもので、本当の片割れである確率は低い。

3.ひとシーズン前の果実。No.2が育ってこうなる。直径2㎝くらいかな。種はもうほとんど無くて抜け殻。

ところで、2と3の上部についている、蓋のようなものがありますよね。これを指ではずそうとしたのですが、かなり力を入れても取れませんでした。取れるものではないのでしょうね。


ブルーガムの花の蓋や身、果実は、少なくともアメリカでは他と間違いようのない特徴だと思います。私の素人基準では、それが落ちていたらブルーガム確定。木の周りをよく見ると、どんなによく掃除がしてあっても、どんな季節でも必ずいくつか落ちていますよ。



樹皮がリボン状に剥落します。

エルドラド パークの木は、こんなことになっています。本場のブルーガムはこんなのでしょうか。

あまり手入れをしないのがネイチャーセンターなので、剥がれた樹皮が枝に引っかかって残っています。
june 29, 2014 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach CA



また、下に落ちた樹皮のリボンは、地面やほかの植物に降り積もっています。
November 15, 2014  El Dorado Park, Nature Center, Long Beach CA



june 29, 2014 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach CA




ブルーガムは、メスのイチョウに次いで最も Messy な木と表現する人がいます。Messy(メッシー)とは汚いという意味ですが、ブルーガムの場合は、散らかし方がひどいという意味だと思います。

(メスのイチョウは、銀杏の実が落ちると、つぶれて汚いだけでなく、猫のウンチのような強烈なにおいがしますよね。あれが一番メッシーなのか、へえ。)




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私が近場で見つけたのは、大規模な公園や学校の敷地内です。公園は、かつて牧場や農地だったところもあるので、その場合、当時のブルーガムを一部残してあるのかもしれません。あるいはまた、カリフォルニアの歴史を語る木として植栽に選ばれることもあるのかなと想像します。

街路樹では見たことありませんし、多分無いと思います。メッシーすぎるので。


書けなかったことが沢山ありますが、一応この辺で終わりにします。

ブルーガムでした。