2014年11月22日

愛らしいカリフォルニアの自生低木、トヨン(Toyon)。



赤い実が冬を彩るカリフォルニアの自生種、トヨンです。
2014年11月15日 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach CA



Rosaceae バラ科、Heteromeles 属
学名: Heteromeles arbutifolia (ヘテロメレス アルブティフォリア)
英語名: Toyon, Christmas Berry, California Holly
日本語名: トヨン(英語名のカタカナ表記)




トヨンは、カリフォルニアに自生する植物の中で唯一(!)先住民がつけた名を受け継いでいます。
今のサンフランシスコの辺りに住んでいたOholone人の言葉なのだそうです。

私は日本人なので、昔のことが伝わることを何となく当たり前と思っていましたが、カリフォルニアでは、この土地の恵みを知り尽くした人々の知識や知恵が引き継がれることなく今の文明があるのだと思うと、本当に残念な気持ちになります。



赤い実のなる木

今の季節、我が行きつけのエルドラド パーク、 ネイチャーセンターを訪れると、赤い実をたわわにつけた木が多く見られます。

昨年末、ネイチャーセンターの記事で、

「冬は赤い実のなる木が何種類もあります。名前が知りたい。
と、書きましたが、ほぼ一年たった今、それらは主にトヨン と ブラジリアン ペッパー ツリー であることが分かるようになりました。 

下の二枚の写真は、昨年の12月に、何かわからないまま写してます。


今見れば、トヨン。
2013年12月22日 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach CA


こちらは、ブラジリアン ペッパー ツリー。
2013年12月22日 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach CA



見慣れると両者の違いははっきりしています。

ブラジリアン ペッパー ツリーの果実は、硬い種とそれを包む乾いた薄皮からなります。トヨンの実は、もうちょっと大きいし、おさえると果肉がつぶれます。

(また何より、ブラジリアン ペッパー ツリーは大木になります。葉は、小さな小葉からなる羽状複葉です。この木のことはまた別の機会にご紹介します。)


下の写真は、7月の、まだ実が赤くなっていないトヨン。細長い楕円形の葉は硬く、周りに細かいギザギザがあります。
2014年9月7日 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach CA



単葉です(ウィキペディアで「」と調べると丁寧な説明があります。ややこしいですが、すごくためになりますよ。)。
2014年9月7日 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach CA





花は、なかなか美しいと思うのですが、写真がうまく撮れなかったので残念ながらお見せできません。Toyon で画像検索していただくときれいな写真がたくさん見られます。



全体の姿

あまり大きくならない低木です。
下の写真は、小道を挟んで左と右にトヨンが広がって生えています。一本の木なのか何本かか絡まっているのか、よくわかりません。


2014年11月15日 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach CA





根元のところはこうなっていました。一本の木と言っていいのかな。かなり年季が入っています。
2014年11月15日 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach CA





もっと若い木。こういう風に根元から別れるのでしょう。7月なので実は白いです。
2014年9月7日 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach CA





さらに、もっと若い木。

2014年9月13日 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach CA





トヨンの逸話

Toyon というと、ほぼ必ず付いてくる説明に、映画の都 ハリウッド(Hollywood)の名前の由来があります。

その昔、今のハリウッドの丘の斜面には、このトヨンが豊富に生えていたそうです。それを見たヨーロッパ系の移住者は、鋸歯のある葉や赤い実が似ているHollyセイヨウヒイラギ)だと思ったのか、ただ似ていると思ったのか、とにかくその土地を Hollywood と名付けたのだそうです。



ここまで読んで下さったカリフォルニアにお住まいの方、トヨンの赤い実をクリスマスの飾りにしようと思い付かれまましたか?

でも、公共の場に生えているトヨンの枝を折ることは法律で禁じられていますから気を付けてください。同じことを考える人が多すぎたせいで、1920年代にできた法律なのだそうです。



以上、トヨンでした。



2014年11月16日

この土地を愛するためにブログを書く。



ちょっと前のエントリーで、何のためにブログを書くのか考えなくてはいけないと書きました。自分の文章を一部抜粋します。
好奇心をドライブに快調にエントリーを重ねているうちに、吸収する情報が加速的に増えてきて、無邪気にに書けなくなってしまいました。例えば、コースト ライブ オークのところでチラッと書きましたが、この自生種に首を突っ込むと、カリフォルニアの気候、地形、歴史などなどのことが絡まって押し寄せてきます。何もかもをブログに書く必要はないのですが、では何を書くかと問うと、自分はブログで何をしたいのかを考えなくてはなりません。



このひと月半ほど、仕事時間が長くて、落ち着いて物事を考える余裕がない日が続いていましたが、ついに直訴して減らしてもらいました。収入は減るけれど、おかげで少し気持ちが落ち着きました。

そんなわけで、今日はゆっくりできたので、折に触れてとりとめもなく考えていたことを、ちゃんと座って紙とペンを持って考えました。



そもそも、ブログを始めるにあたってタイトルを何にするか考えていたとき、
 「アメリカにずっと住む」 という言葉に胸がドキドキしたことを思い出しました。月並みに言うと何かが心の琴線に触れた。無理に説明を試みると、自分の心の核心部分にある、まだ自分で捉えていない霧のようなものが形をとり始めた。とにかく、これをタイトルとする当たって後に引けないような気持ちを抱いたのは確かです。まあ、 「...つもり」 をくっつけたのは弱気のせいなのですが。



それで、とにかく色々と投稿を連ねてゆくうちに、街路樹ウォッチング(後に樹木ウォッチングに拡大)を始めることになり、結構心を奪われるほど楽しくなりました。いろいろ迷うこともその都度エントリーに吐露し、悩むのも楽しいと思ってきました。そして、今回の冒頭の迷いです。


これまで、樹木のことをいろいろ知るようになったことの中で何に一番興味を引かれたかというと、それぞれの樹木が今のようになった経緯だと思います。対象となる樹木が、「都会の森」つまりUrban Forest の木なので人が必ずかかわっているのは当然なのですが、知れば知るほど短い時間に起こった嵐のような人の営みの拡大が、樹木にも影響が及んでいたことに今更ながら驚くのです。変わったのは、もちろん樹木だけではありませんが、樹木を通じて知るというのは自分に合っているように思います。

歴史という時間的な変遷だけではなく、気候や地理ももっと知りたいと思います。もちろん、アメリカやカリフォルニアの様々なことについて、本やネットでいくらでも詳しく知ることができますが、私がしたいのは自分の言葉で理解することなのです。

つまり、観光案内のようなカリフォルニアの紹介ではなく、自分の心を通過して生じた理解を伴ったエントリーを書きたいということなのです。大層なことは書けないでしょう。それでも、自分が掴んだ小さいものを、メモ紙をピンでボードに止めるように続けてゆけば、それらが集まってまとまった理解が生じるかもしれません。どのように進むか分かりませんが。


もう、自分には郷土愛のような気持ちがあると思います。そうだとすると、冒頭の迷いに対する答えとして、もっとはっきりした言葉を見つけました。

この土地のことを知ることで、この土地への愛着を深めたいです。この土地を愛するために、ブログを書きます。


以上、あくまで、今のところ、の気持ちですけど。




2014年11月12日

わりとよく見かけるマルベリー(Mulberry)の木、日本語名は桑。



街路樹になっているのは見たことないけれど、ちょっと広いスペースや、住宅の前庭によく見かけます。そして何より、小学校の校庭には必ずある木です
(断言していいのか?)

下の写真は、近くの小学校の木です。もう11月なので、黄色くなった葉が落ち始めていました。
November 9, 2014   Holder Elementary School, Buena Park, CA


小学校では授業で蚕(カイコ)を育てるので、餌用として校庭に何本か植えてあるのでしょう。実際、我が娘たちもやってましたし、夏休みが始まるときには余った蚕をもらってきたので、学校に桑の葉を採りに行きました、そういえば。



Moraceae (クワ科)、Morus(クワ属)の落葉樹。

学名: Morus alba(モルス アルバ)

英語名: White Mulberry, Silkworm Mulberry, Russian Mulberry, Moral Blanco
日本語名: マグワ
原産地: 中国

お馴染みUFEIで私の写真よりきれいなマルベリーが見られます。

いろいろ園芸品種があるらしいのと、イマイチ確信がないので、クワ属の総称として、クワ、又はマルベリーと呼ぶことにします。

この種類の木がアメリカに移植されたのは、国ができるより前の植民地時代だそうで、やはり絹糸をとる養蚕のためだったそうですが、その後すっかり帰化して 、今やアメリカのほぼ全土で、 雑草ならぬ雑木状態になっているらしいです。


雌雄異株で、オスの木とメスの木が別々にあります。植栽としてはオスの方が扱いやすいのか、植えてあるのは大抵オスの木です。メスの木にはキイチゴのような美味しい実がなりますが、実が落ちてあたりがグチュグチュになると困るのでしょう。


以前住んでいたところに、メスのマルベリーのある家があり、広がった枝が塀の外にはみ出していました。そして実のなる季節には近くの子供たちが、外から手の届く実を取って食べていました。
確かに果実が歩道に落ちてちょっと汚かったですが、それよりも、こんな体験ができることは子供時代を豊かにしてくれる有難いものだと思います。

もう一つマルベリーの実の思い出。あるとき簡単な集まりに、マルベリーの実とスイカズラの花をお盆にのせて持ってきた人があって、大いに感銘を受けたことがあります(スイカズラの花は、うす甘いほんのちょっとの蜜を吸うのです)。
どちらも店で買えるようなものではなく、すぐに痛んでしまう儚いものです。なんとも、妖精の食べ物をこっそり横取りしたような、とでもいうような心地がしたことを今でも覚えています。



*****




昔の話はともかく、私が樹木ウォッチャーになったばかりの頃、まだ何を見ても新鮮だった頃のクワのことをちょっと紹介させてください。


下の写真は、我がサイプレス市の市庁舎の庭のクワの木です。
今年の3月に撮った写真ですが、このときには、この木が何なのか全く分かりませんでした。
March 23, 2014  Cypress City Hall, Cypress CA




若い葉と花(
相変わらず、ピンボケですが)。
今ならオスの花だと分かりますが、そんなことは思いもよりませんでした。
March 23, 2014  Cypress City Hall, Cypress CA



花があるならいずれ実がなるはずだから、そしたら何の木か分かるだろうと考え、時が経つのを待つことにしました。


そして、下の写真が6月です。
わが市では、夏の宵にこの木の下で “コンサート オン グリーン” という ささやかなコンサートが催されます。近所の人が場所取りに椅子だけ置いておくのが恒例で、私が樹木ウォッチングに行ったときには、写真のように、椅子ばっかりが日の暮れるのを待っていました。
June 28, 2014  Cypress City Hall, Cypress CA



木をしげしげと観察しました。葉が青々と豊かに繁っていました。付いているはずの実を探しましたが、何もありません。
June 28, 2014  Cypress City Hall, Cypress CA




June 28, 2014  Cypress City Hall, Cypress CA



ほんとに、分からなくなってしまいました。Tree Keyというのを使って検索したりもしたのですが、分からなかったですね。



それが、あるとき、ふと住宅の前庭に植えてある木が目に入って、昔の小学校の校庭のクワの木の記憶が一気によみがえって来ました。
“なーんだ、クワか。” と、なぜか興奮もなく落着したのでした。


多分、市庁舎の木は、学校の木とは違う形に剪定してあって印象が違ったのでしょう。下の方の枝がきれいに切り払ってあって、樹冠が高いところにありますから。




ついでですが、下の写真は市庁舎の向かいにある高校の庭のマルベリーです。3月のこの時はまだ何なのか分からないまま、“この辺りにはこの木が多いのね” と思いながら写真を撮っています。
March 23, 2014  Oxford Academy High School, Cypress, CA





今見れば明らかな雄花が、沢山地面に落ちていました。
March 23, 2014  Oxford Academy High School, Cypress, CA



ちなみに、こういう長い房状の花を catkin(キャットキン)といいます。クワに限らず色んな種類に catkin 状の花があるようです。

高校でも、蚕の飼育をするのか、あるいは見栄えのいい樹木として植えてあるのか、どうなのでしょうね。



以上、どちらかというと思い出語りのマルベリーのエントリーでした。