2015年10月31日

ファイカスの仲間 その2. そのモンスターを庭にうえるのですか?  ウィーピング フィグ(ベンジャミン)



前回、前々回の投稿も見てね。




前回に続き二番目のファイカスは、ウィーピング フィグ。日本では鉢植えの観葉植物になってベンジャミンと呼ばれています。

前回のインディアン ローレル フィグ同様、奇跡的に丈夫な木で、巨木になるポテンシャルを秘めています。
でもちょっと見た目は、柔らかな感じです。
2015年8月9日 Cypress, CA

外側の細い枝が枝垂れているせいで、インディアン ローレル フィグのかっちりした丸い樹冠と違って、例えるなら、毛の長い犬がモシャモシャしているのと同じような感じがします。


名前のこと、特徴など


学名:   Ficus benjamina(フィクス ベンジャミナ)
英語名:  Weeping Fig(ウィーピング フィグ), Weeping Chinese Banyan
日本語名: ベンジャミン、シダレガジュマル、ベンジャミンゴム
原産地: インド、マレーシア

学名の benjamina、日本語名のベンジャミン は共に、インドでファイカスの仲間の木をさす言葉 “バンヤン”から来ているらしいです。

英語名のWeeping は枝垂れた枝のことをさしています。



白い幹と明るい緑の樹冠。モシャモシャしている。
2015年8月9日  Rome Ave. Cypress, CA




葉は、特徴のある先が尖った形。インディアン ローレル フィグよりも色が明るく、厚みは薄いです。
2015年8月8日  Artesia Blvd. Cerritos  CA


落ち葉も先が尖っている。
2015年8月8日  Artesia Blvd. Cerritos  CA



庭木になってる!


このページの冒頭の写真は個人の庭で見つけたウィーピング フィグです。住宅街を走ってみると、この木は本当によく庭に植えてあります。



下の写真は、植えたまま伸び放題という感じ。
2015年8月13日  Long Beach  CA


ぐっと刈り込んでいる家もあります。
2015年8月9日  Cypress, CA




この破壊ポテンシャルの大きい木を、なんで庭に植えるのでしょう。まあ、始めは大きくないので、深く考えずに植えてしまったのかもしれません。



昔の思い出話をご紹介します。

子供たちが小さかったときに借りていた家は、左右両方の家の前庭にこのファイカス(ウィーピング フィグ)が植えてありました。

我が家は、きつい西日がキッチンの窓に入るのをさえぎる為に、庭にミカンの木を植えましたが、なかなか大きくならなくて、結局、当初の目的の日除けにはならないままでした。ミカンは採れましたけど。

同じような間取りの家が並んでいる一角だったので、左右の隣人はきっと我が家と同じ日除けの為に、成長が速くて葉がよく繁るファイカスを選んだのでしょう。若い木でしたが屋根の高さくらいにはなっていたと記憶しています。

一方の隣人がある日、前庭で一家総がかりで何かをしていました。きいてみると、木の根が排水管に侵入して流れが悪くなったので、機械を借りてきて排水管の内側から根を切る作業中ということでした。

管から引きずり出した根を見せてもらいましたが、根のかたまりは小さな灌木ぐらいもありました。ファイカスの仕業でした。隣人が言うには、始めは排水管の極々細い隙間から、水を求めて細い根を侵入させるのだそうです。


こんなことが、あちらでもこちらでも起こっているのでしょうか。木を植えるというのはこういう不都合も一緒に受け入れるということなのでしょうか。そうかもしれませんが、ファイカスのようなモンスターを、排水管が近くにあるようなところに植えたらだめですよね。




このウィーピング フィグは、簡単に苗木が買えます。

下の写真は、Home Depot という、ホームセンターのウィーピング フィグのセクションです。大きいのや小さいの、葉の縁が白いのもありました。
2015年10月21日  Home Depo, Cypress CA


Weeping Fig と書いてあります。



12インチは鉢のサイズでしょう。 約32ドル。



小さい庭には植えるなとか、注意書きくらいつけておいた方が良いと思うのですが。

インディアン ローレル フィグは、売っていませんでした。




本当の街路樹にはなっていない


庭の話が長くなりましたが、もっと広い道路に出て車を走らせると、インディアン ローレル フィグもウィーピング フィグも、どちらも普通に良く見かける木です。さらに見慣れてくると、この二つの種類の植えてある場所の違いが見えてきました。

インディアン ローレル フィグは街路樹になっていますが、このウィーピング フィグは、本当の街路樹になっているのは(少なくとも私の活動範囲では)見ません。

“本当の街路樹じゃない” というのは、道路に沿って並んでいるけれども、実は敷地に沿って植えてある木のことです。つまり、ショッピングセンター沿いとか、ビジネスパーク沿いとか、学校沿いとか。なのでその敷地が終わると並木も終わり、長く続きません。インディアン ローレル フィグの並木が長々と続き、圧倒的な効果でその道路の雰囲気を作っているのとは対照的です。



近所にちょうどいい並木があったのでGoogleの写真をお借りします(Googleの決まり事を忘れた訳ではないのですが、もういいじゃん)
あまり大きくないです。若い木なのかな。
2015年 Google Street View  W. Ball Rd. Anaheim



同じところの、私の撮った写真。
2015年10月30日  Ball Rd, Anaheim  CA




さらに、この場所を空から見たところ。
横に走っている道路の下側に並んでいる丸々がウィーピング フィグの並木です。
2015年 Google Street View  W. Ball Rd. Anaheim
ぎっしり並んでいる長方形の家は、モービルホームというタイプの家で、ここは、モービルホームパークと呼ばれる集合住宅です。そこの前だけに植えてあります。




ウィーピング フィグが本当の街路樹になっていないのは、もしかしたら、インディアン ローレル フィグ先輩があまりに大きなトラブルを起こしたせいで、巻き添えで市の街路樹リストから外されたのかもしれません。

街路樹を植えるのは、だいたい市(郡とか州のこともあるかも)だと思います。そして、街路樹じゃない方はそれぞれの敷地の所有者のはずです。そういった敷地内でもトラブルは起こっているとはずですが、なぜこんなにあちこちに植えてあるのかしら。本数が少ないのと、税金で対応する訳ではないので適当にやっているのかな。

(もちろん、インディアン ローレル フィグが “本当じゃない” 街路樹になっていることは、全く普通にあります。)




その他にも、こんなところに、こんな風に


下の写真は、ビジネスパークの中です。建物に沿ってウィーピング フィグが植えてあります。
さらに、後ろの方に塀に沿ってインディアン ローレル フィグが見えます。
2015年8月8日 Artesia Blvd. Cerritos CA

こんなに建物や塀にくっ付けて植えて大丈夫なのと思うのは素人なのかしら。



トピアリーという刈り込んだ形。これは、まあ、かわいいキャンディー型。
2015年9月28日 Knott St. Garden Grove, CA



こちらは、かわいくないトピアリー。
2014 Nov. Google Street View  Orangethorpe Ave. Buena Park CA






以上、本当に、どこにでもあるウィーピング フィグでした。





2015年10月20日

ファイカスの仲間 その1. モンスターは飼いならせるか、インディアン ローレル フィグ(ガジュマル)



イントロとしての前回のエントリーも見てね。

ファイカスの街路樹として一番よく見かけるのは、インデアン ローレル フィグ。日本語名はガジュマル。

白い幹と緑の葉が明るく陽に映え、葉が密に繁っているのに重々しい感じがしません。
2014年2月3日 Woodruff Ave. Lakewood, CA


上の写真を撮った ウッドラフ通りは、このファイカスの街路樹が長々と続く道路です。両脇に側道があって広々としているのに交通量はそれほど無く、走ると気持ちがいい道です。


同じウッドラフ通り。右が側道。この側道は、ファイカスのおかげで日陰が多く、車をとめるのに良さそう。
とにかく陽射しが強烈なので、冬でも日陰があったらうれしいのです。
2014年2月3日 Woodruff Ave. Lakewood, CA




グーグル車から撮った、同じくウッドラフ通りです。ずっと向こうまでファイカスの街路樹が続いています。
ほんと、街路樹の写真は車の目線で写すのが一番ですね。
Google Street View  2015年8月 Woodruff Ave. Lakewood, CA




名前のことなど

クワ科(Moraceae)、イチジク属(Ficus)

学名: Ficus microcarpa(フィクス ミクロカルパ)
   ミクロカルパは、小さい果実の意 
英語名Indian Laurel Fig(インディアン ローレル フィグ), Laurel Fig, Laurel Rubber, Chinese Banyan
日本語名ガジュマル
原産:マレー半島、ボルネオ



ウィキペディアによると日本語名のガジュマルは沖縄の地方名とのこと。また、沖縄の伝承としてガジュマルの大木にはキジムナーという妖精住んでいるのだそうです。 

確かにガジュマルという言葉には、熱帯の水分をたっぷり含んだ空気と、妖精が住むような魔術的なイメージあります。

でも、乾燥した南カリフォルニアで車の排気にさらされながら道路ぎわに並んでいる巨木たちには、妖精なんて近寄りもしないでしょう。

なので、ここでは日本語名では呼ばずに、長い名ですがインデアン ローレル フィグにします。人工的な感じの名前がかえって相応しいかも。(他の種類との混乱が無いときにはファイカスと呼ぶかもです)。


ちなみに、“ガジュマル” で画像検索をすると、気根を無数に垂らした魔術的な大木の写真が見られます。ところが “Indian Laurel Fig” だと、街路樹の写真が多くでてきます。面白いですね。



果実、葉、幹

名前のとおり、小さなイチジクの形をした果実がつきます。鳥や小動物の餌になるそうです。

木の下には、いつ行っても実が無数に落ちていました。

2014年2月4日 South Ave. Lakewood, CA


葉っぱも、小ぶりです。

(大きさの比較が分かるようなものを置いて写真を撮るべきですよね)
2014年2月3日 Woodruff Ave. Lakewood, CA

家に持って帰って写した写真

2014年2月3日


別のところのインディアン ローレル フィグ。
葉っぱの形がちょっと違う。
2014年2月4日

どうも、カリフォルニアの街路樹になっているインデアン ローレル フィグには、二つの亜種があるようです。葉の形が多少違っていたり、少し枝垂れたのや、枝垂れていないのがあるのはどうもそのせいだと思います。

ただ、街路樹としての外観は同じにみえるので、ここでは違いは追及しないことにします。


幹。
原産地では、枝から無数に気根が垂れ下がり、本来の幹や枝がどうなっているのか分からない程になっていますが、カリフォルニアのファイカスでは気根を見ないのは、気候が違うからなのか、それとも剪定をしょっちゅうするからなのか、どちらでしょう。
2014年2月4日 South St. Lakewood, CA


足元は何だか狭苦しそう。
根が道を持ち上げたり下水管を壊したりしない様に相当お金がかかっているらしいです。
2014年2月4日 South Ave. Lakewood, CA




トラブルも、木の大きさと同じくらい大きい ーーふたつの新聞記事から

ロサンゼルスの新聞、Los Angeles Times の古い記事がネット上で見つかりました。20年ほど昔の記事ですが、現在も同じことが進行中と思いますので、適当に紹介します。


Ficus' Shady Reputation Prompts Change in Scenery
March 13, 1996  Larry Gordon, Times Staff Writer

タイトルは、“ファイカスの悪評が景観の変更を迫まる”。もうちょっと詩的に訳せたらいいのですが。

ここで言うファイカスは、インディアン ローレル フィグ のことで、記事ではこのファイカスのことを、very very hardy、あるいは miracle tree と表現しています。つまり奇跡的にものすごく丈夫ということです。

汚れた空気の中でも、あるいは、まともに世話されなくても、さらには高層ビルの陰で陽に当たらなくても、過酷な都会で元気にそして美しく育つのだそうです。

このファイカスは、1950年代末から1960年代初めにカリフォルニアで集中的に大量に植えられたのだそうです(具体的な数は書いてありませんが)。

そして、成長が非常に速い木なので、たちまち常緑の樹冠が通りを美しく飾り、カリフォルニアのエレガンスや豊かさのイメージの中に溶け込んで行ったのでした。

けれども、何ごとも良いことばかりでないのが世の常で、木が育つと共に、歩道を持ち上げたり、下水管を壊したり、道路標識や看板を隠すという問題が起こってきました。また、剪定にもかなりの費用がかかるのだそうです。

そんなこと、植える前から分かりそうなもんですが、たぶんトラブルの大きさが予想外だったということなのでしょう、想像ですが。

この記事の書かれた1996年の時点で、すでにカリフォルニアの多くの市がファイカスを大量に除去しており、また、新しく植えられることも少なくなっているのだそうです。

また、道路沿いに小売店やレストランが並ぶようなRetail District と言われる地区には、ファイカスの街路樹があることは珍しくないのですが、こういうところではファイカスを除去するか、高い経費をかけて維持するか議論が持ち上がるのが常なのだそうです。

個性ある店舗群と共に、ファイカスの存在がその地区のイメージを作り上げておりお客さんを引き付ける重要な要素になっているのです。

維持するためには、地下に張った根を切ったり、根が広がらないようにする障壁を埋めたり、歩道を補修したりしなくてはなりませんが、こういう対策が実際に効果があるのか、あるいは木を弱らせないか、確かなことは分からないのだそうです。

その話題に関して、ここに、2013年3月の日付の記事があります。
地元紙、オレンジ カウンティ― レジスター(Orange County Register)です。

Ficus trees spark debate in Seal Beach
March 23, 2013

タイトルは、“シール ビーチでファイカスを巡る議論の火花が散る”。

Seal Beach市は、オレンジ郡の北部にある海沿いの小さな町です。我が家から最も近い海がここなので、海沿いの散歩にでも行こうかというときはここに出かけてゆきます。

そして、海岸に突き当たる小さな通りが メイン ストリート(Main Street)といって、古くからあるレストランやアンティークの店などなどが並んでいます。ここが記事に取り上げられているファイカスの論争の火花が散っているところです。

記事によると市議会は、メインストリートにファイカスを25本、ファイカスじゃない古い木に替えて植えることを決議したというものです。均一な街路樹で通りを美化し、集客力のある地区を更に魅力的にしようというものです。けれども、市長は猛反対で、まだ変更の可能性があると一歩も引かない構えなのだそうです。

それからどうなったのかは知りませんが、久しぶりに海の散歩に行きがてら、メインストリートの街路樹ウォッチングをしてきました。



メインストリートで街路樹ウォッチング


まず、Google の写真から。小さなお店やレストランが並びます。ファストフード店なんてないですよ。レストランは、よくお客さんが入っています。
2015年2月 Google Street View Main St. SealCA Beach, 
手前のファイカスが目立ちますが、奥の方は違う木です。市長さんの主張が通ったのかしら。


メインストリートは、中央通りなんて意味ですが、名前に似合わず小さい道です。街の始まりの昔にこの辺が中心だったのかな。


ファイカスだけが入るように写しました。同じ木が続く魅力的な通りに見えるでしょうか。
2015年8月7日 Main St. Seal Beach, CA

ピンボケですみません、もうすぐ日が暮れる夕方です。ファイカスはかなり細目に形造られている。
2015年8月7日 Main St. Seal Beach, CA

通りの向こう側に、ファイカスじゃないのが並んでる。
2015年8月7日 Main St. Seal Beach, CA




最後に、木が写ってない写真を。
メインストリートにつながって、海に伸びるピアです。メインストリートより歩いている人が多い。
2015年8月7日 Seal Beach Pier, Seal Beach, CA



以上、インディアン ローレル フィグでした。






2015年10月17日

ファイカスの仲間の連続投稿を開始する...つもり



樹木ウォッチングを始めたばかりの頃にファイカスの仲間を取り上げたのですが、超初心者だったため内容的にほぼ破たん状態でした。

気になりつつ、今回やっと書き直しエントリーを始めます。前のはそのうち削除するつもりですが記念に残しておくのもいいかも。




私の住んでる辺りでファイカスといえば、こんな街路樹が思い浮ぶはず。
2014年2月3日 Woodruff Ave. Lakewood, CA
Ficus microcarpa(ガジュマル)



それから、こんなのも。
2015年9月28日 Knot St. Garden Grove, CA
Ficus Benjamina(ベンジャミン




英語でファイカス(ficus)というと、大雑把にイチジク属(Ficus フィクス)に属する大木を指すみたいです。

ただ、イチジク属なら何でもファイカスと呼ぶ訳でもないようで、同じ仲間のインドボダイジュやゴムノキはファイカスとはいわないような気がする。

一方、果物のイチジクがなるイチジクの木は、フィグ ツリーと呼ばれているはずです。フィグ(fig)はイチジクの実のこと。でも、ファイカスの大木のことをフィグ ツリーと称することも目にします。

とにかく、総称や一般名を詮索するのはこれ以上は止めておきます。学名とは違って決まりがないからです。



さて、これから私の活動範囲で見かける四種類のファイカスを紹介してゆくつもりです。都会の森の大型構成員です。

上の写真の二種類に加えて、以下の二種。
  • Ficus rubiginosa  (フランス ゴムノキ なんて日本語名がついている)
  • Ficus macrophylla  (日本語ではオーストラリアゴムノキ。超巨木です。街路樹ではないけど、時々見かける)

まとめて全部を一つのエントリーするか迷いましたが、後で参照するのにかえって混乱が起きそうなので一種類ずつにします。


また、以前のファイカスのエントリーでは種類の見分けをゴニョゴニョ迷っていたのですが、今回、正確さのレベルの低さを、それで良しとすることに決めた上での書き直しです。この自覚は樹木ウォッチャーとしてなかなかの進歩だと思っているのですよ。



最後に、ファイカスを含むイチジク属の共通の特徴である果実について、ウィキペディアの記事が分かりやすかったので引用です。
共通の特徴は、その特殊な花序にある。イチジク無花果と言われるように、この仲間は、花が咲かずに唐突に果実を生じるように見える。もちろんそんな訳はないのであって、実際には果実に見えるものが花序なのである。

では、予告編おわり。