2014年3月27日

名前がわからなかった木の名前がわかった!



かれこれ一ヶ月以上も名前を捜し求めた木の名前が、ついに分かりました!

名前はすぐには言いたくないです。勿体つけます。



本当に長い間、“こんなにどこにでもあるのに、どうして名前がわからないの!” と、何度も叫んだのです。


まず、写真をごらんください。南カリフォルニアにお住まいでしたら、“ああ、あれね” と思って下さるでしょう。


1. 写真で名前のわかる方、いらっしゃいますか。あなたは、ガーデナーさんですか。


あまり目立たず、見過ごしてしまうような木。常緑樹です。
2014年3月23日 Orange Ave. and Grindlay st. Cypress, CA


一枚の葉っぱに見えるのは、実は葉の一部で、小葉といいます。小葉が4 ~10 枚集まって一つの葉になります。こういう葉を複葉(compound leaf)といいます
同上


枝が伸びて、新しい葉がついています。
2014年2月13日 Orange Ave, Cypress, CA




花の季節は過ぎました(見逃しました)。
果実は、まだ、熟す季節になっていません。
2014年3月23日 Orange Ave. and Grindlay st. Cypress, CA




この実は熟すと、開いて中からオレンジ色の果肉と黒い種が現れ、殻ごと歩道に落ちます。毎年それを踏んで歩いていましたが、名前はつゆと知りませんでした。

果実は、たわわに実っている木や、ほんの少しの木、全く実っていない木もあります。オス、メスがあるわけではなく、そういうものなのだそうです。
2014年2月13日 Orange Ave, Cypress, CA



ごく若い木、支柱がついてます。大事にされている。


2014年3月11日 Cypress Plaza East Shopping Center, Cypress, CA


























学校の前に植えてありました。街路樹ではないので、あまり刈り込まれていないせいか、自然な丸い樹冠になっています。新しい枝が外側に向かって勢い良く伸びています。
2014年2月27日 La Palma Ave., Buena Park, CA

幹は、わりと滑らかな灰白色。

この樹皮が傷ついて剥けると、その下にあるオレンジ色の層があらわれるそうです。
2014年3月23日 Orange Ave. and Grindlay st. Cypress, CA





古い木では、樹皮がひび割れ、色も黒っぽくなります。
2014年2月27日 La Palma Ave., Buena Park, CA





2. 名前と、見つけた経緯
名前は、Carrotwood(キャロットウッド)。


この名をさがしもとめて、樹木の名前の検索に使う Urban Tree Key でいろいろ試しましたが、わかりませんでした。ロサンゼルス市、サイプレス市、その他いくつかの市の街路樹のサイトに行って、写真をいろいろ見ても、それらしいのがありませんでした。

見つけたきっかけは、サンタモニカ市のウェブサイト。以下の手順でたどり着きました。直接リンクできないので、興味があったら辿ってみてください。

Santa Monica Urban Forest
  左欄のリストの一番上“About the Urban Forest” をクリック
  開いたメニューの一番下“Online Tree Inventry” をクリック
  
  新しくページが開きます
  “Top 25 Specise” をクリック
  
ここに、サンタモニカ市の街路樹の多い順から25種類のリストがでます。なんて素晴らしい! 今まで見た他の市のリストは、“植えて良い木” なのですが、サンタモニカ市は、“今植えてある木” のリストなのです。

そして、25種類の木の名前と写真をつくづく眺めて、その中に全く心当たりのない木がたった一種類残ったのです。それが、Carrotwood。そこにある写真では私の探している木かどうかわからなかったのですが、その名前でインターネット検索したら、見覚えのある写真がズラズラと出てきました。
思わず、“ヤッター” と叫んだ一瞬でした。いやー、気持ちよかったです。


学名: Cupaniopsis anacardioides 
   (クパニオプシス アナカルディオイデス)

一般名: Carrotwood、Tuckeroo、 Beach Tamarind、 Green-leaved Tamarind 

   (UFEI では間にスペースが入って Carrot wood )

原産地: オーストラリア、インドネシア、ニューギニア 

樹皮の下にあるオレンジ色の層が野菜の人参の色のようなのでこの名があるとのことです。



3. かわいそうに、嫌われ者

でも、面白いのは、ネットで検索した Carrotwood についての記事は、ほぼすべて、まるで犯罪者あつかいです。
invasive (侵襲的)、weed (雑草ならぬ雑木) などといわれています。実にこと細かに、木の特徴もプロファイルされています。

政府(National Park Service)の指名手配書まであります。下は、手配書の一部のスクリーンショットです。
Plant Conservation Alliance  Screen Shot



普通、お尋ね者は“WANTED” ですが、ここでは、“LEAST WANTED”。つまり、“最もいらない”。いくらなんでもかわいそうになってきます。

ここに、地元の新聞、 Los Angeles Times の2009年3月7日の記事があります。
それによると Carrotwood は、成長が速く、増やし易く、病害虫に強く、海岸地域の環境に適している性質を見込んで、1950年代に、造園用の樹木として、まずフロリダに導入されたのだそうです。ところが、原産地にはあった害虫や天敵などによるコントロールが効かず、またたく間に在来の生態系を破壊するほどに蔓延ってしまったとさ。
ハワイやフロリダで被害は甚大らしいですが、南カリフォルニアではその乾燥した気候のおかげで、それ程でもないとのことです。


だから、名前を探して南カリフォルニアのいくつかの市のサイトを見ても、お勧めの街路樹のリストには載っていなかったのですね。Urban Tree Key に無いのは手落ちだと思いますが。




4. 南カリフォルニアではあちこち植えてある

当地では街路樹として植えられることは、もうないかもしれませんが、その他の場所、例えばショッピングセンターやオフィスビルの敷地の中では、まだまだ沢山使われそうです。

下の写真は、スーパーマーケットなどがある大きなショッピングセンターの駐車場です。Carrotwoodが大量に植えてあります。
2014年3月28日 Imperial East Shopping Center, Brea, CA




駐車場のような場所に植えるには、ぴったりの木なのでしょうね。あまり大きくならない、値段が安い(想像だけど、きっと)、日陰を作る、舗装を持ち上げない、車を汚すような樹液や実が落ちない、などなど。

これは、上記のショッピングセンター、及び、道路を挟んだ北側のショッピングセンターの駐車場を、上から見たところ。Google のサテライトビューです。丸い緑色はほぼ全てCarrotwoodです。
Google Satelite View Imperial East Shopping Center, Brea, CA




ここは、日曜なので車が見えないですが、ビジネスビルの駐車場。Carrotwood ばっかり。ちょっと予算をけちったのかな、と思いたくなります。
2014年3月23日 Orange Ave. and Grindlay st. Cypress, CA







以下の写真は、Carrotwood が雑草になって、ひょっこり生えているところ。
生垣などを気をつけて見ると、本当にこの光景は普通です。雑草並の逞しさです。
2014年3月23日 Orange Ave. and Grindlay st. Cypress, CA






2014年2月19日 Orange Ave, Cypress, CA




以上、この木はこれからどうなるのでしょうね。




4月5日追記


何と、我がアパートのキャロットウッドが二本、切られました。
写真は、その切り株です。切られてから数週間経っています。
Carrotwood 2014年4月4日 Orange Ave. Cypress, CA



はじめは、もっとオレンジ色が鮮やかだったような記憶があります。すぐに写真撮らなくてはいけませんね。

敷地内には、キャロットウッドが沢山植えてあるのですが、そのうちの二本。物置小屋のすぐ横なので、場所が悪かったのかな。



次の写真は、ロングビーチ市のエルドラドパークの自然散策が出来るネイチャー・センターで見つけた、キャロットウッドと思われる切り株です。
Carrotwood 2014年4月5日 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach , CA


樹皮のすぐ下のオレンジ色がはっきりしています。

Carrotwood 2014年4月5日 El Dorado Park, Nature Center, Long Beach , CA




他にも、キャロットウッドと思われる新しい切り株があったので、公園はこの木が増えないように戦うことにしたのでしょう。

一方、この公園には、悪名高い侵襲的植物であるブラジリアン ペッパー ツリー の大木が沢山あります。もう、この木と戦うのは遅すぎるのでしょう。





2014年3月26日

カナリーヤシとナツメヤシ、続き



前回は私の主観が大いに入った記事でしたので、今回はもう少し客観的な内容で。



カナリーヤシとナツメヤシは、両種とも乾燥した地域の原産ながら、氷点下の気温にも耐え、湿度の高い熱帯でも生育し、幅広い気候に適応するそうです。それに加えてその堂々とした姿から、世界各地で造園用のヤシとして人気が高いのだそう。また、成長してから掘り出して植え替えても枯れたりせず、移植が容易なのも多く植えられている理由の一つとのこと。


両種とも成長が速く非常に背が高くなるとのこと。ワシントンヤシの仲間、特に W. robusta 程ではないながら、ヤシ科の中では速く大きく育つ種類に入るということでしょう。寿命は、どちらも50年から150年。ロサンゼルス市には100年を越えるカナリーヤシがあるらしく、25メートルほどに育ち、そして枯れてゆくのだそうです。



L.A.市のカナリーヤシ。かなり古そう。これは、“お金のにおい” はしないです。昔は別の理由で植えられたのかも。
May 2011, Google Street View    S. Palm Grove Ave., Los Angeles, CA



葉は羽状。両種とも一本の葉の長さが4~ 6 mもあり、大きく下向きにアーチを描いて全体として丸い樹冠を形作ります。



こちらは、ナツメヤシ。
剪定したばかりらしく、下向きの葉がありませんが。
2014年2月17日 Lincoln Ave, Cypress, CA




















どちらも、雌雄異株で、つまり、雄花だけが付くオスの木と、雌花だけがつくメスの木があるのだそうです。
両種とも、果実は食べられるそうですが、実際に人の食料になるのは、ナツメヤシの実であるデーツだけ。カナリーヤシの実は “食べられないことはない” 程度だそうですが、試してみたいものです。

左後ろがナツメヤシ、右がカナリーヤシ。どちらも花が咲いてます。オス、メス不明。

January 2011  Google Street View,   South St., Cerritos, CA







カナリーヤシ

massive とか stately という形容詞が必ずつくヤシ。巨大とか堂々として立派という意味。unsurpassed beauty だの magnificent と美しさを称えられることも。確かに、建物や場所を立派に見せる効果が充分にあります。


葉を剪定するときに、葉柄の付け根を残して、写真のようにパイナップルの形に作るのが今のファッションらしいです。

2014年3月23日 Orange Ave., Cypress, CA
パイナップル型のしつらえ。
一緒にならんでいるのは、メキシカン ファン パーム (W. robusta)。ともに、葉っぱが剪定されすぎ。



同上

パイナップルを、下から見上げたところ。










見た目の立派さにたがわず、非常に高価なヤシで、成長した個体では数千ドルもするらしい。実際、個人の庭先などに生えているこのヤシを買い取る業者がいるそうで、タダでもいいから持って行って欲しいと思っている持ち主から買い取って高く売るのだそうです。ただ、背が高すぎるのは売れないとのこと。


南カリフォルニアでは毎年、この立派なカナリーヤシが、たくさん病気で枯れているそうです。Fusarium wilt というカビが原因で、これに感染すると、まず間違いなく枯死するとのこと。カビは、剪定に使う道具を介してヤシからヤシへとうつるので、道具を清潔に管理しておくことが予防法だそうです。

また、悪いことに、死んだヤシが生えていた土には長くカビが残り、このヤシを植え替えることが出来ません。ワシントンヤシ属は植えても大丈夫らしいです。死んだカナリーヤシの、文字通り、穴埋めに使われるのかしら。


学名、Phoenix canariensis の名のとおり、北アフリカの西沖合にあるカナリー諸島が原産地。


余談ですが、カナリー諸島は南カリフォルニアと気候が似ているのか、カナリーマツという、やはり同諸島原産の背の高い松の木が、街路樹として普通にあることを発見しました。そのうち記事にすると思いますが、マツの見分けは、まだ自信が無いです。





ナツメヤシ

一本の木としては、カナリーヤシに見劣りしますが、沢山植えてあると、やはり、圧倒されるような王様感があります。

カナリーヤシが高価すぎるのか、あるいは、病気を恐れてか、このナツメヤシのほうが、植えてある本数は断然多いと思います。
果実をとるために内陸部で大量に栽培されているので、供給が充分あるのでしょう。

重そうにたわわに実がなっています。このあと間もなく、ばっさり剪定されてました。
2014年2月3日 Cerritos Town Center, Cerritos, CA






同上








剪定しすぎのナツメヤシ
2014年3月14日 Lincoln Ave., Cypress, CA





ナツメヤシは、全てのヤシの中で、ココヤシに次いで、最も経済的価値のあるヤシなのだそう。

デーツが実るヤシ。その栽培の歴史は五千年に遡るとのこと。原産地は、北アフリカから西南アジアにかけての何処か。余りに長きに渡って栽培され、もはや元の種類が何だったかも良くわからないらしい。何十種類もの亜種に分かれる。

確かに、地元産デーツにも、Medjool と Deglet noor というのがあって、大きさ、果肉の歯ざわりなどはっきりと違う。とにかく、いずれもその甘さに驚く。こんな物が木に実るとは、まさしく天の恵み。でも、ここは街路樹の話なので、食べることは別の機会に。


果実をとるために栽培するには、高温で乾燥した気候が必要で、カリフォルニア内陸部の Coachella Valley(コチェラ バレー)というところが、デーツの一大生産地になっています。


ところで、日本語のナツメヤシの “ナツメ” は、別の植物 ナツメ(Ziziphus jujuba)と、その果実の名に由来する。クロウメモドキ科の落葉高木とのこと。干したナツメの外見がデーツに似ていることから、そう呼ばれるようになった。





以上、ヤシのことになると、書きすぎですね。





以下のサイトを参考にしました。


Dave's Garden

Phoenix Palms - Trees of Unsurpassed Beauty
By Geoff Stein (palmbob) June 23, 2013
http://davesgarden.com/guides/articles/view/529/#b



関連記事



2014年3月19日 お金のにおいがするフェニックスの仲間のヤシ、カナリーヤシとナツメヤシ

2014年3月23日

南国の花の木、Purple Orchid Tree、バウヒニア、Bauhinia variegata が花盛り




日曜日の午後、我が町サイプレス市内をうろうろ歩き回って写真を撮ってきました。


これは、市内の学校区の事務関係のことを統括するところ。小さな建物ですが、その庭に見事な花の木がありました。
一本だけですが、ずいぶん横に広がっています。
2014年3月23日 Cypress Elementary School District Office, Cypress, CA



近づいてみると、こんなきれいな花。花びらは、赤紫の濃い色から、ごく薄い色まで花によって差があります。
同上



同上

こちらは、色が濃いめ。











まだ若いながら、豆の実がなっています。








果実は豆のようだけれど、花は豆らしくありません。
ちょっと前に記事にした ピンク トランペット ツリー も豆のような実が成っていましたが、マメ科ではありませんでした。

でも、とにかく、UFEI のサイトで Fabaceae (マメ科) で調べてみました。そしたら、ぴったりのがありましたので、簡単ですがBauhinia variegata に決定。


学名: Bauhinia variegata 
花の色がいろいろある Bauhinia属(ハカマカズラ属)の植物の意 - 我流解釈です、あしからず。

英語名: Purple Orchid Tree
日本語名: バウヒニア、フイリソシンカ

インド、中国原産の熱帯・亜熱帯の植物とのこと。南カリフォルニアでは、元気に育つようです。

葉っぱの形が独特です。日本では軍配とか羊蹄とか袴にたとえられています。
同上



新しい葉ではないですね。
今冬の異常気象で落ちずに残っているのか。いずれ、もうすぐ落ちるはず。











すぐ近くに、若い街路樹がありました。
2014年3月23日 Orange Ave. Cypress, CA


そして、一本だけ白い花の咲く木が混じってました。業者が間違って売ったのかしら。

同上





同上

花は同じ形。
豆の実もなっています。










それから、別の道を通ったら、こんな街路樹がありました。
一見、ナシの花かと思いましたが、もうナシの花はとっくに終わっているはず。
2014年3月23日 Lincoln Ave. Cypress, CA



そう、さっき見たのと同じですよ。白いのもきれいです。
同上

UFEI サイトによれば、この白い花の咲く木は、同じ種類の中の園芸上の品種 Bauhinia variegata 'Candida' ということになってました。candida はラテン語で  という意味です。

学名: Bauhinia variegata 'Candida'
英語名: Buddhist Bauhinia, White Orchid Tree
日本語名: たぶん、バウヒニア




以上、分かりやすい木は、楽です。








2014年3月21日

アキニレ、またの名を チャイニーズ エルム (Chinese Elm)再び




前回チャイニーズ エルム について投稿したのは、1月31日でした。
そのときの写真をみると、まだ新しい葉が出ていなくて、なんだか不景気そうな木に見えます。

そんな印象のまま放っておくのは気の毒な気がしますので、新しい写真を御紹介します。

以前と同じ場所の、同じ木です。
2014年3月14日 Myra Ave. Cypress, CA





季節が進むともっとモシャモシャに繁ると思いますが、そのうちばっさり剪定されてしまったりするので、今のうちと思って写真を撮ってきました。私のカメラでは、春の息吹があまり写らないですね。





これは、近くの公園の木です。こちらの方が、若葉の色が良く見えます。街路樹ではないので、おおらかに横に大きく広がっています。

剪定しないで放っておいたら、いったいどんな形になるのでしょうね。地面にまで枝が届くのじゃないかと思いますが。
2014年3月11日 Essex Park, Cypress, CA






2014年3月11日 Essex Park, Cypress, CA







新しい、つやつやの葉っぱ。

どんどん枝分かれして伸びてゆくようです。














チャイニーズ エルムは樹冠の下に大きな木陰をつくるので、公園で、この木の下に敷物をひろげて、お弁当を食べたり、お昼寝したりするのにぴったりです。子供たちが小さいときは、本当にそんなことをしました。思えば、遠い昔の、夢のようなひとときでした。



これは、また別の公園のチャイニーズ エルム。

2014年3月21日 Frontier Park, Cerritos, CA



Google のストリート ビューで、同じ公園の1月の写真がありましたので、見てください。見事に葉が落ちています。

January 2011 Google Street View, Frontier Park, Cerritos



前回の投稿に載せた、1月末のチャイニーズ エルムの写真では、古い葉がしっかりついていました。

何度も言うようですが、この冬(2013~2014の冬)は、記録的に暖かく、かつ、雨がほとんど降らなかったので、木もいつもと勝手が違ったのではないでしょうか新米街路樹ウォッチャーの言うことなので、どのくらい当てになるか分かりませんが)。


以上、とりとめもありませんが、追加記事でした。




ハンサムな常緑樹-- ブリズベン ボックス(Brisbane box)




怪物のような巨木や、葉に手が届かないほど背の高い木、上へ上へと伸びるヤシなど、これまでは目立つ木々の名前を探してきましたが、今回は、余り目立たないながら、程よい大きさで見た目の良い木です。

日本語でハンサムというと人間の男性だけですが、こちらでは人間以外でも、気が利いていて見た目が良いものに使ってあるのに出会います。今回の木は、その形容詞にふさわしいと思います。

この木には、特に気に入っている特徴があるのですが、それは後ほど。


まず、典型的な姿。横に広がらず、縦に伸びる木です。 
2014年3月11日 Moody St. Cypress, CA



実は、この木は私が住むアパートの敷地内に沢山植えてあります。この木の存在に気付き、名前をつきとめ、次第に馴染みになってくると、あちこちでよく目に止まるようになりました。あまり大きくない道の街路樹として、ごく普通に植えられている木だと思います。


この木の名前を調べるのに使ったのは、カリフォルニア州政府が支援している Urban Tree Key (都会の木検索)というウェブサイトです(UFEI からもリンクがついています)。

まず、そのUrban Tree Key のサイトの手順に従って、葉の特徴で検索します。
2014年3月11日 Moody St. Cypress, CA




単葉 (simple) → 対生 (opposite) → 全縁 (not lobed)。
たったこれだけで何種類かの候補が挙がり、その中から UFEI の助けを借りて、Brisbane Box (Lophostemon confertus)と決定。

学名: Lophostemon confertus(ロフォステモン コンフェルツス)
実がカプセル状の Lophostemon 属の植物の意-私の解釈です、ここだけでしか通用しません)
英語名: Brisbane Box
日本語名: たぶん、なし

Briabane (ブリズベン)は、オーストラリア東岸の都市の名です。原産地はその辺のようです。
干ばつによく耐え、スモッグに強く、病気になりにくいとのことで、温暖な気候の都市の街路樹としてポピュラーらしいです。

白い花が咲くそうですが、その時期はどうも逃したようです。来年は1月ころから気をつけて見ていましょう。
果実は、カプセル状で、ユーカリに似ています。実際、ユーカリと同じフトモモ科に属します。
また、樹皮がむけて剥がれ落ちるのも、同じくユーカリと共通です。

果実の写真2枚です。
2014年2月11日 Orange Ave. Cypress, CA






2014年3月11日 Moody St. Cypress, CA




樹皮の様子。
灰色のガサガサした古い樹皮は自然に剥げ落ち、下から、目の細かいサンドペーパーのような赤茶色の肌があらわれます。
この赤い皮も一部が剥がれると、写真はありませんが、下から薄緑色の肌がのぞきます。雨が降った後に、そうなっているのを見たのですが写真を撮れませんでした。残念。
2014年3月13日 Gilbert St. Fullerton, CA





2014年3月13日 Gilbert St. Fullerton, CA





この木に良い角度で陽があたると、枝が赤く輝いて見えます(私がひそかに気に入っている特徴です)。

一番最初の写真のように、この木は葉が密生していないので隙間から枝がのぞいています。この枝は若々しい赤い色をしていて、朝夕、低い角度で陽があたると、光が木の奥まで届き、枝が輝くのです。常緑樹の葉の緑色とのコントラストで、枝の赤はいっそう引き立ちます。

写真には、なかなかうまく赤い色が写りませんが、下の写真は
ちょっとだけ、感じが出ていると思います。本当はもっとずっときれいです。
2014年2月13日 Orange Ave. Cypress, CA




お近くにこの木がありましたら、ぜひ、よく見てやってください。でも運転中は脇見しないように。




関連記事:

2014年4月13日  ブリズベン ボックス(Brisbane box)続き、地味に見所の多い木



2014年3月19日

お金のにおいがするフェニックスの仲間のヤシ、カナリーヤシとナツメヤシ




ワシントンヤシに続き、大型のヤシです。


まず、写真をみてください。

Phoenix属 (ナツメヤシ属)の二種類、カナリーヤシとナツメヤシです。両方の種類が混じっています。
May 2011, Google Street View - West St. Anaheim, CA

場所は、フリーウエイを下りてディズニーランドへと入る道。道路に沿ってこの種類のヤシがぎっしりと植えてあり、世界中からのお客さんを歓迎しているようです。

(道路に立って写真を撮るわけにいかないので、Googleストリートビューからスクリーンショットです。ありがとうストリートビュー、私の写真よりずっといいわ。)


この種類のヤシが植えてあると、まるで、宮殿へ続く道のように見えます。そして、その道を通ることで、知らないうちにある気分が吹き込まれるようになっているのです。

メッセージは、

“あなたは、ここにふさわしい人です。さあ、贅沢に楽しみましょう!” (翻訳: しっかりお金使ってね)



とはいえ、順序としてまず、名称を整理します。

1. 名称


学名: Phoenix canariensis(フェニックス カナリエンシス)
   カナリー諸島産フェニックス属の植物の意   
   日本語名 カナリーヤシ   
   英語名 Canary Island Date Palm
   

学名: Phoenix dactylifera(フェニックス ダクティリフェラ)
   デーツ(ナツメ)が実るフェニックス属の植物の意
   日本語名 ナツメヤシ
   英語名 Date Palm

今回は、ワシントンヤシと違って日本語名が分かりやすいので、“カナリーヤシ”、“ナツメヤシ” を使うことにします。


外見に “高級感がある” ということのほかにも共通の特徴はたくさんありますが、まず街路樹としての見分け方から。


2. 葉と幹で見分けがつく


一見とてもよく似ていますが、葉と幹で見分けがつきます
(ただし、ワシントンヤシと同じく、両方の交配種というのがあるらしいです。それは今のところ、ここでは考えないことにさせて下さい。)


1) 葉

どちらも長い羽状の葉ですが、カナリーヤシのほうが平らな感じで、より鳥の羽根のような形です。ナツメヤシでは葉の縦軸にそってたたまれたようにV字の角度がついていて、細長く見えます。

さらに葉の数では、カナリーヤシの方が多くいっそう樹冠が密に繁って見えます。ナツメヤシは葉がまばらで隙間が多く見えます。

もちろん、健康状態や樹齢によって個体差はあるようですが、割とはっきり分かります。


まず、カナリーヤシ。
2014年3月11日 Cypress Plaza East Shopping Center, Cypress, CA



こちらは、ナツメヤシ。

2014年2月3日 Cerritos Town Center, Cerritos, CA



写真では、両種の差が特に強調されています。
カナリーヤシの方が若く、葉のつき方が特に密です。ナツメヤシの方は剪定したばかりらしく、下向きに下がっている葉がありません。



2) 幹

葉が落ちた痕が、ひし形、あるいは、うろこ模様になって残っています。

カナリーヤシの幹。
2014年2月17日 Lincoln Ave. Cypress, CA




ナツメヤシの幹。こちらの方が、模様が立体的で、でこぼこしています。
2014年2月3日 Cerritos Town Center, Cerritos, CA



この記事冒頭のディズニーランドへ続く道の写真では、左列がカナリーヤシ。中央分離帯がナツメヤシと思われます。ナツメヤシでは幹の凹凸も良く見えています。
その右はナツメヤシ、さらにその右にチラッと見えるのはカナリーヤシ、ということにしましょう。行って車を降りて近づくのは難しそうなので。


3. お金を使う気にさせる木


近場で観察した範囲でいうと、この二種のヤシは、ある程度以上の大型商業施設にまとまった本数で植えられています。
本当に、“お金を使う気にさせる” 雰囲気作りに大きくかかわっていると思います。

その点は、ワシントンヤシの仲間、特に W. robusta (メキシカン ファン パーム)と大きく違うところです。ロブスタさんが並んでいるのを見ると開放感のようなものがありますが、それは心が伸び伸びするような感じであって、決して物欲の開放感ではないです。

私の住む近くでは、やはり、ディズニーランド周辺が徹底しています。下の写真はディズニーランドの真横のカテラ通りです。Googleマップで見ると、約1.5 km にわたって写真のようにナツメヤシがギッシリと植えてあります。すさまじいとさえ感じます。
アナハイム市が管理しているのでしょう。ディズニーランドのためにはお金を使うのね。
(ロブスタさんの並木も近くの道路にあります。カリフォルニアらしさの演出のため?)
April 2011 Google Street View, Kattela Ave, Anaheim, CA




次の写真は、大型ショッピングセンターの隅っこに植えてあるカナリーヤシです。
写真を撮ったときには、なぜこんな人も通らないようなところにこの高級ヤシを植えたのか不思議だったのですが、最近答えに気が付きました。分かりますか?
2014年2月21日 Cerritos Town Center, Cerritos, CA




理由は、生垣の向こうがフリーウェイの出口になっているからです。つまり、このショッピングセンターに向かってフリーウェイを降りたお客さんに、カナリーヤシの洗礼で心を正しく整えてもらうのです。
April 2012 Google Street View, 91 Freeway, Cerritos Town Center Exit






その他に、個人の庭に植えてあるのをたまに見かけます。この巨大なヤシを、大邸宅ならともかく普通サイズの家では、いかにも持て余しているように見えます。特に、どちらの種類も葉柄の付け根近くに長くて鋭い針のような棘が並んでいて、背の低いヤシでは近づくのさえ危険です。

良く考えないで種や苗を植えて、気がついたら、除去することも大変だし、そのまま持っておくのも大変になってしまったのじゃないかと他人事ながら心配になります。ただ、アメリカでは、家の売り買いが頻繁なので、買った家にヤシの木が付いていた、という場合もありそう。

続く。



でも、他の街路樹のことを先に書くつもりです。
ヤシにかまけているうちに、若葉の季節が過ぎてしまいそうです。


関連記事



2014年3月26日 カナリーヤシとナツメヤシ、続き