2014年7月18日

干ばつにも炎暑にも負けない根性者、サルスベリ(Crape Myrtle)



夏に、長期間多彩な色の花が咲き続ける落葉樹、サルスベリ(Crape Myrtle)です。


サルスベリというと、趣のある枝ぶりで和風の庭の定番樹木というイメージを持っていました。でも、カリフォルニアに来たら、サルスベリは街路樹になっていました。

日本で見たよりも花の色が多彩で、そして何より、木の形が “すなお” なのが意外でした。真っ直ぐの幹の上に丸い樹冠。絵に画いたような木の形をしていて、ずいぶん違うなと思ったものです。(今ちょっと調べてみたら、日本でもサルスベリの街路樹は普通にあるようです。)

それから25年も経って、やっと、この木をもうちょっとよく見て、よく調べてみようという気になりました。そうしたら、本当にびっくりするくらい沢山植えてあることが見えてきました。今ちょうど花の盛りの季節なので、私の素人目にも存在が見えるのですけどね。



住宅地の街路樹。
2014年7月8日 El Viento Way, Buena Park, CA



この色の咲きっぷりが、一番いいみたい(私が見た範囲では)。
2014年7月8日 El Viento Way, Buena Park, CA




左の道路が大通り。右側は、側道とでもいうのでしょうか。
濃いピンクの花。本当はもっと色鮮やかなのですが。
2014年7月8日 Knott Ave. Buena Park, CA



その年に出た新しい枝の先端に、花がつくのだそうです。
2014年7月8日 Knott Ave. Buena Park, CA



街路樹だけでなく庭先にもよく見かけます。

これは、幹が一本立ちではないです。
2014年7月8日 Knott Ave. Buena Park, CA




種類と名前

総称で Crape Myrtle (クレープ マートル)。多くの園芸品種があり、その元になっている種が二種類あります。

それら多彩な園芸品種と、原種が取り混ぜて植えられているようですが、ここでは特に区別する場合以外はサルスベリ 又は Crape Myrtle の名前を使うことにします。実際、植えた人にしか品種名は分からないと思います。いや、植えた人でも分からないかも。

科名: Lythraceae(ミソハギ科)
属名: Lagerstroemia(サルスベリ属)

以下は、元になっている二種類のサルスベリの名前です。

その1
学名: Lagerstroemia indica(ラジェルストロミア インディカ)
英語名: Crape Myrtle, Crepe Myrtle, Crapemyrtle
日本語名: サルスベリ、百日紅(ヒャクジツコウ)
原産地: 中国

その2
学名: Lagerstroemia fauriei(ラジェルストロミア ファウリエイ)
英語名: Japanese Crape Myrtle
日本語名: ヤクシマサルスベリ(たぶん)
原産地: 日本

実は、日本語のサイトには、L. fauriei という名は見つからないのです。代わりに、L. subcostata var. fauriei がヤクシマサルスベリになっています。でも、これ以上は追及しないことにします。学名は、結構変遷するものなので。





私が見た範囲でも花の色では、白、薄いピンク、濃いピンク、赤、赤紫、紫と多彩です。また、木の大きさも様々で、高さが1メートルにもならないものから、10メートルくらいになるものまであるのだそうです。

状況に応じて種類を選んで植えれば、ほとんど剪定の必要もなくその場にフィットした姿を保つことができるのだそうです。見かけによらず、世話いらずの木らしいです。




私にとっては珍しいと感じる紫色の花。本当は、写真よりもっと青みが強いのですが。
2014年7月8日 El Verano Dr. Buena Park, CA





お決まりの、UFEI の サルスベリ属のリストを見ていただくと、多彩な園芸種の片鱗を覗くことができます。




L.A. Times の記事


ネット上で、Los Angeles Times のサルスベリの記事がありましたので、かいつまんでご紹介します(いつもお世話になります、L.A. Times 様)。

タイトルは、“サルスベリ: 炎暑にも負けない美しさ” 。

Crape myrtle tree: Beauties that can take the heat

Emily Green
September 2, 2011 9:27 AM



“サルスベリの新世代” とも呼ぶべき現在の園芸品種の先鞭をつけた人物、Donald Roy Egolf が紹介されています。

Egolf(エゴルフ) は、ワシントン D.C. にある国立植物園(U.S. National Arboretum)で、1958年から1990年に亡くなるまでの間plant breeder (植物の交配家?)だった人です。

18世紀終盤にアメリカに最初に導入されたサルスベリ、L. indica は、多彩な花の色、美しい幹、固くてなめらかな木材といったすぐれた特徴があるにもかかわらず、うどん粉病(Mildew)に罹り易いという難点があったせいで、せっかくの美質が評価されていませんでした。

そんな期間が続いた後1960年代になって、Egolf が L. indica に日本産の L. fauriei を交配するというプログラムをスタートさせました。L. fauriei は、何より、うどん粉病に耐性があるのです。そして、複雑な過程を経て、最終的に23品種が作り出されたのだそうです。

これらの園芸品種は 比較的湿気の多い東海岸で生まれたのですが、意外なことに、抜群の干ばつ耐性を備えていて、乾燥した気候の地域で大変評価されることになりました。

実際、カリフォルニアでは、夏は降水がほぼゼロですし、時として摂氏40°にもなる日が続いたりします。そんな気候のなかでサルスベリは、散水設備が無くて通常の街路樹が植えられないような悪条件の場所で萎れることなく花を咲かせ続けるのだそうです。

(ただし、若木のうちは 植えてから根付くまでは、ちゃんとした水やりが必要と書いてあります。)

ところで、Egolf はそれら全ての新品種に、アメリカ先住民族の名前を付けました。例えば、Hopi, Arapaho, Muskogee 等。品種名を見ると国立植物園生まれということが分かるのだそうです。

記事の著者は、乾燥した気候で強く生きる性質と、先住民とを重ね合わせて感慨にひたっています。

以上、L.A. Times の記事でした。


下の写真は、記事にあった “うどん粉病” だと思います。
大抵、水のやり過ぎが原因だそうで、スプリンクラーの設置が悪いのかも。
2014年7月11日  Imperial East Shopping Center, Brea, CA





花のほかにも、紅葉、そして裸の幹が美しいらしい。

全く気が付きませんでしたが、紅葉が美しい品種が多いようです。9月に花が終わったあと、オレンジ色やワインレッドの葉の色を 4か月余りにわたって楽しめるとのこと。本当かしら、楽しみだわ。


そして、その長い紅葉の季節が過ぎると、幹を楽しむ季節が来るのだそうです。落葉した後の幹の色や姿を、花以上に愛でるのが “通” らしいです。



7月の今、幹は以下のような感じ。
滑らかな幹。
2014年7月8日 Knott Ave. Buena Park, CA



2014年7月8日 Knott Ave. Buena Park, CA



樹皮が剥落している幹。


2014年7月8日 El Verano Dr. Buena Park, CA



実際、新しい若葉が出始めるのがとても遅い木です。

今まで見た中で、プラタナス や アメリカン スイート ガム は4月にやっと若葉が付きましたが、その頃でもサルスベリはまだ葉が出ていませんでした。多分5月になってからだったと思います。なので、裸の幹を楽しむ期間は長いことになります。

ただ、私は今年の冬から春にかけてサルスベリを見ていたのですが、枝に枯れた葉や乾燥した果実の殻がびっしりくっついたままで、美しいとは程遠い有様でした。

下の写真は、ちょっと見にくいですが、前年の果実の殻がまだついているところです。どの木もこうなっています。
2014年7月8日 Knott Ave. Buena Park, CA



昨冬は、いつもの冬の嵐が来なかったせいで振り落とされなかったのかも知れません。あるいは、幹を楽しむためには枯れた殻を手で除いてやらなくてはいけないのかもしれません。次の冬にどうなるか見てみましょう。




それにしても、良いことづくめの木ですね。花を長く楽しみ、そして紅葉を長く楽しみ、さらに葉のない幹を長く楽しむ。手入れがあまり要らず、水やりもいらない。


水不足が常のこの地で、あまり水の要らない植物の庭が奨励されています。地元原産の草木に交じって、サルスベリもおすすめのリストにきっちり入っているようです。



ちなみに、サルスベリの英語名Crape Myrtle の元になっている植物 Myrtle(マートル、ギンバイカ) は、サルスベリとは種類の異なる植物の名前です。私が今つまづいているフトモモ科に属する常緑低木とのこと。Myrtaceaeフトモモ科)の名のもとになっている植物でもあります。



サルスベリでこんなに長い記事を書くとは思ってもみませんでした。これから、もうちょっと軽く書きたいです。

以上です。


2014年7月8日

フトモモ科の連続投稿、挫折しました。



フトモモ科の木を続けて記事にするつもりでした。

でも、二件で挫折です。

ユーカリ以外の種類では、名前が分かっているのもあるのですが、思ったように花の写真がとれなかったり、あるいは、花の季節が今ではなかったりします。



そして、ユーカリの仲間は難しいです。


少なくとも、Blue Gum、Red Gum、Red Ironbark の三種類は、はっきり分かるようになりたいと、あれこれ見ているのですが、花と果実が付いていない今の季節では決め手に欠けます。
葉や幹での識別が不可能ではないようですが。初心者には無理と感じます。

たぶん、最初は知っている人に名前を教えてもらうのが良いのかもしれません。隣のコミュニティー カレッジ には植栽の手入れをしている人を何時も見かけるので尋ねてみたらいいのですけどね。でも、自分で“ 分かった!” という喜びを味わいたいので、どうしよう 。


今日は、近場の植物園にも行ったのですよ。でも、ユーカリの仲間には名札が付いていませんでした。
中に果実が付いている種類があって、もしかしたら Cider Gum かも知れないと思うのですが、ホント、管理している人に確認しないと確信が持てません。

まあ、迷うのも楽しいです。
昨日は、夕焼けに映える雲が、ユーカリの幹によく似ているなあと思ったりしましたもの。



もう、変な予告をするのは止めます。
気を取り直して、分かったものから淡々と記事にして行きます。





2014年7月3日

フトモモ科 メラルーカ属の木、カジュプット(Cajeput Tree, Melaleuca quinquenervia)



オーストラリア原産、Myrtaceaeフトモモ科)、Melaleucaメラルーカ属、コバノブラシノキ属)の常緑樹です。

少なくとも私の活動範囲では、極々普通に見られる木。以前紹介したブリズベン ボックス と同じくらいの出現頻度という印象があります。つまり、本当にどこにでもある木。


June 28, 2014, Orange Ave. Cypress, CA


名称

学名: Melaleuca quinquenervia(メラレウカ  クィンクェネルビア)

英語名: Cajeput Treeカジュプット  ツリー)、Melaleuca、Paperbark tree、White Bottlebrush、Punk Tree

日本語名: あるのかどうか不明、もしかしたら“カユプテ” かも



ここではCajeput あるいは、カジュプットと呼ぶことにします。





June 28, 2014, Orange Ave. Cypress, CA
長楕円形の葉。互生。

葉を半分に折ってにおいをかぐと、ほんのりユーカリに似た香りがあります。

実際、葉から精油が採れるらしく、ネットで “メラルーカ” と検索すると、オイルの宣伝がずらずらと出てきます。

繁殖力が旺盛な木で、種から発芽した後短期間で(条件が良いと2~3年で)もう実がなるということで、精油の材料の葉は豊富にあるのだと思います。

原産地のオーストラリアでは先住民が昔から、この木に限らず、フトモモ科の植物から採った精油を医療的用途に使っていたということですから、効果がないということもないでしょう。


花と果実


花も果実もブラシノキによく似ています。花は主に冬に最も沢山付くそうですが、一年中チラホラと咲いているようです。

私が街路樹観察を始めた一月頃は、確かに花ざかりで、果実も沢山ついていたのですが、今は少しだけです。
June 28, 2014, Orange Ave. Cypress, CA


ビン洗いのブラシのような花。枯れて茶色くなったところもあります。
June 28, 2014, Orange Ave. Cypress, CA

果実。枯れた花が残っていて毛のように絡まっています。
June 28, 2014, Orange Ave. Cypress, CA


特に花と果実については、UFEI の Cajeput Tree の記事に、私のよりずっと写りのいい写真がありますので参考にして下さい。


いわゆる、Paper Bark(ペーパー バーク、紙のような樹皮) と呼ばれる幹です。薄いコルク質の樹皮が紙のように重なっていて、いつも破れて剥がれています。


June 28, 2014, Orange Ave. Cypress, CA



June 28, 2014, Orange Ave. Cypress, CA





June 28, 2014, Orange Ave. Cypress, CA




June 28, 2014, Orange Ave. Cypress, CA





全体の姿


Google Earth からの写真です。

ちょっと前にGoogle マップが少し変わって、使い勝手に慣れるまで手間取りました。サテライトビューという言葉を使わなくなったみたい。

2011年の8月の写真です。カジュプット の並木です。花が、冬程ではないにしてもよくついています。
August 2011 Google Street View, Ball Rd. Cypress, CA







ところで、この Cajeput Tree は、どうも見た感じが、活き活きしてなくて、ボロっとしているのが多いんです。

幹の外見のせいもありますが、もしかしたら剪定され過ぎなのかなと思います。生命力のある木なので、雑に扱われても耐えているのでしょうか。

こんな感じ。
June 28, 2014, Orange Ave. Cypress, CA




下の写真は、公園の Cajeput。あまり剪定されずに育っているのでしょうか、ボロボロには見えません。

私が見た中では、一番大きな Cajeputです。種類が近いせいか、ユーカリと感じが似ていると思います。
March 11, 2014, Essex Park, Ball Rd. Cypress, CA





世界の侵略的外来種ワースト100にはいってる!!


ウィキペディアの記事によると
世界の侵略的外来種ワースト100(せかいのしんりゃくてきがいらいしゅワースト100, 100 of the World's Worst Invasive Alien Species)とは、国際自然保護連合(IUCN)の種の保全委員会が定めた、本来の生育・生息地以外に侵入した外来種の中で、特に生態系や人間活動への影響が大きい生物のリストである。以下に指定された生物を列挙する。
と始まり、リストに “カユプテ” の名で Melaleuca quinquenervia が入っています。イエネコ とか ワカメ もリストされています。

アメリカでは、 この木は、フロリダ南部の湿地帯(エバーグレーズと呼ばれる湿原、世界遺産になってる)に大きな被害を与えているそうです



以前記事にした、キャロット ウッド の一枚上手を行く問題樹のようです。同じく 政府(National Park Service)の指名手配書が出ています。







以上、フトモモ科シリーズの二回目終了。




フトモモ科を連続投稿すると書きましたが、都合よく花が咲いている木が少ないので、ちょっと後悔中。