2015年1月7日

(カリフォルニアの)ユーカリのはなし その2

前回 ユーカリのはなし その1からの続きです。

Treelessー木が無い景色というのは今でも普通に見られます。


19世紀後半にカリフォルニアにやって来た移住者が “間違っている” と感じた景色は、今でも普通に見られます。

下のGoogle Earth の写真は、それに近いと思います。

画像の左上 “View on Google Maps” をクリックしていただくと、Google Earth がひらきます。そこからストリート ビューを見てください。
 

57番フリーウェー沿い、南カリフォルニア、オレンジ郡北部ブレア市付近です。低い丘が連なるところで、草と灌木、所どころオークなどの木立の組み合わせだと思います。


実は、1988年にやって来た私も、フリーウェーから見える山や丘を見て当時の人と同じように感じた一人です。福岡に生まれ育ち、山と森がほぼ同じ意味になっている自分の頭では、眼前に広がる光景をどう受け取ってよいやら落ち着かない気持ちになったのを覚えています。



下は、だいたい同じ場所を自分で撮った写真です。車の窓越しなのでいつもよりさらに出来の悪い写真ですみません。
December 26 2014, 57 Freeway near Brea


草に覆われ灌木が混じっています。こういう景観を Chaparral (シャパラル)といいます...とネットで勉強しました。灌木は密生することもあります。
所どころ、灌木ではなく大きい樹木がある部分もあります。
December 26 2014, 57 Freeway near Brea

恐らくウッドランド(Woodland)と呼ばれる、樹木の集まっているところですが、森林といえるように広範囲ではありません。





カリフォルニアの木の無い(少ない、が正しい)風景を幾らかでも実感いただけたでしょうか。




やっと、ユーカリのはなしに辿り着きました

オーストラリアとその周辺の島々だけに固有に自生するユーカリは、何百種類(600~900種類、諸説あり)もあるそうです。の存在が外の世界に知られるようになり、さらに、その経済的な有用性が考慮され始めたのは19世紀初頭のことらしいです。

それを受けてオーストラリアに住むヨーロッパ系の人たちは、ユーカリの美質を高らかに謳って世界に売り込みを始めました。いわく、成長が非常に速い、土壌を改良し、マラリアのはびこる湿地を健康的な土地にする、気候も変える、薬用になるオイルが採れ、シロップも採れる、などなど。

ヨーロッパ、アフリカ、インド、南アメリカでは、カリフォルニアに一足先駆けて植林されていました。


カリフォルニアでは、ゴールドラッシュ後間もなくユーカリが上陸し、それ以後植えられ続けているのですが、過去に二度の突出して熱狂したブームがありました。

一度目は1870年代、二度目は1907年から1913年にかけて。性質の異なるブームでした。



1870年代のユーカリ大量植樹

木のない土地を何とかしなくちゃという気持ちと、遠いオーストラリアからやって来たユーカリのいい話が混じり、増幅し、熱狂的にユーカリの植樹が行われた時代です。

この時代の大地主の中には、森をつくることで人類に貢献したいとまで気持ちを昂ぶらせ、自分の土地に何万本ものブルーガムを植えた人たちもいました。木を植えることで雨を呼び、気候まで変えられると信じたのでした。

とはいえ、このときの主なブームの担い手は農場主たちで、土壌の改良や、強風から作物を守る風除けなどが期待されました。

ところでユーカリの仲間はそももそ成長が速い木なのですが、カリフォルニアでは有り得ないほど速く育ったらしいです。気候が適していたことに加えて原産地オーストラリアにはある病原菌や害虫がなく、また、ユーカリを食べる動物もいないことによるのだそうです。

下のリンクからは、25年経ったブルーガムの大木が見られます。

   Who Eucalyptized Southern California?
   by Nathan Masters 
   May 16, 2012

1900年ごろの写真とあるので、1875年に植えられたことになります。



そして1870年代が過ぎ、熱が冷めるときが来ました。

ブルーガムの電信柱はすぐに腐り、線路の枕木は割れ、薪としてもあまり上等ではなかったようで、木材として二級品のレッテルが付いてしまいました。

一方、農場に風除けとして植えられたユーカリは、強風で倒れやすく、また農作物に行くべき水と栄養を奪うことが分かり嫌われました。

結局、見た目以外に良いところが無いということになったのです。期待し過ぎ、植え過ぎ、植える場所を考えなかった、そして、木材としては収穫が早すぎたのだそうです。



ブームが去って忘れ去られたかというと、そうではなくて、都市の緑化、あるいは街路樹としての利用は続きました。

特にサンフランシスコ周辺のベイエリアの気候はブルーガムに適していて、例えば、風が吹きすさぶ砂地だったところの緑化に貢献し、今のゴールデンゲートパークができたのだそうです。


また、ブルーガム一辺倒だったのを、各地の事情に適した新しい種類のユーカリの導入も始まりました。


けれども、懲りずにまた次の熱狂がやってきます。

続きます。
ユーカリのはなし その3



こんなエントリーを書くのは超疲れます。誰のために書いているのだか。はい、自分の頭のまとめのためです。すいません。






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