乃り子さんはお化粧していない、と書きましたが、冒頭でいきなり口紅をつけるシーンが出ました。あらら。でもとにかく、自然に見えます。
キューティーとボクサーとは、それぞれ、妻の篠原乃り子(のりこ)さん、夫の篠原有司男(うしお)さんのことで、ニューヨークに暮らす芸術家。有司男さんの方は、若いうちから名を知られていたようですが、生涯を通じてお金にはあまり縁がない暮らしのようです。
篠原夫妻が、芸術家として生きることと偽りのない生き方をすることの両方を追求して、生活のあらゆる面で摩擦を起こしながら果敢に生きてゆく姿が描かれています。二人の、遠回しだったり、ストレートだったりする本音の吐露は、可笑しくも美しく、心を打ちます。
夫妻と私とで共通点は、ゼロではないにしてもごくわずかです。それでも、二人を通して人間の本当の何かに触れた気になります。この人たちは、真実に触れたことがあるな、人間の存在の深い井戸の底まで下って底に触ったな、と思わせます。
そう思わせるのはこのドキュメンタリーを作った人の力量なのでしょうが、篠原夫妻の人間性と芸術家としてのプライドがあってこその作品の価値であるのは当然でしょう。
ところで、私は、のりこさんの話す全ての言葉、全てのしぐさや佇まいが、びんびん心に響きます。身につまされるような共感があります。
うしおさんのほうも、映画が良く出来ているせいか、気持ちが理解できる気はするのですが、びんびん伝わるとまではいきません。
これって、男と女のちがいなのかな。我が夫がこの映画を観たら、うしおさんに共感するかな。聞きたいような、聞きたくないような。
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