2016年9月4日

カナリー松 (カナリー アイランド パイン) --- 今まで見て見ぬふりをしてごめんなさい



カナリー松の街路樹。住宅街の小さい道路の両側にそびえ立っています。
2016年8月30日 Knoxville Ave, Lakewood CA




今まで、針葉樹の仲間の樹木は、つい見て見ないふりをしてきました。理由は多分、きれいな花のような分かりやすい特徴がないことや、私のようなぼんやりした素人をハッとさせるような心揺さぶるインパクトに欠けるからかなと思います。

とは言え、カリフォルニアの都会の森には、針葉樹の仲間は種類・数共に豊富に植えてあります。特に今回ついに取り上げるカナリー松は、冷静に考えてみれば、その植えてある数の多さが、まさに心揺さぶる驚きの多さなのです、本当に。

車を運転していれば、近くにも遠くにも、とにかく背の高い頭の尖った姿が目に入ります。ヤシの木並みの多さです。いえ、本数はヤシの仲間の方が多いでしょう。でも、空間に占めるボリュームで比較すれば、カナリー松の方が多いかもです。



これは、大きい通りの街路樹。Google のストリートビューをお借りします。道路の左右だけでなく中央分離帯にも植えてあります。
May 2016 Google Street View, Artesia Blvd, Cerritos CA



マツの仲間は、自生種はカリフォルニアといわず北米一帯、高山から低地の海辺まで、たくさん種類があります(カリフォルニアの自生のマツ属の種についてはウィキペディアのこれなどを参考に。)

ところが、人がつくる ”都会の森” となると、今回取り上げる、アフリカのモロッコ沖合の大西洋に浮かぶ小島にのみ自生するカナリー松(Canary Island Pine)が、その数において抜きん出ています。


下の写真は、遊園地 Knott's Berry Farm(ナッツ ベリー ファーム)の駐車場の周りを取り囲むカナリー松。この付近は、特にこの木の密度が高い気がします。
April 2018 Knott's Berry Farm, Buena Park CA



名前と特徴

Pinaceae(マツ科)
Pinus(マツ属)
学名:Pinus canariensis
英語名:Canary Island Pine (カナリー アイランド パイン)
日本語名:カナリー松、カナリア松
原産:カナリー諸島




木の形は、細長い円錐あるいは円柱形。
2014年1月 Cypress Community College, Cypress CA




若くて背の低い木は、もう少し裾の広い、いわゆるクリスマスツリー型。
2016年8月30日 Niagara Ave, Lakewood CA




高さは、15 ~ 25 メートルになるそうです。
寿命は、50 ~ 150 年くらい。
成長は早く、一年に1メートルくらい伸びるそう。




真ん中の幹から伸びる枝は、下がり気味。
2016年8月30日 Valley View St, Buena Park CA



葉は、三枚というか松葉なので三本、がひと束になっています。

日本の代表的な松である赤松とか黒松の松葉は二本(二葉、“によう”)なので、日本では松葉のデザインは二葉になっていますよね。

アメリカでは自生種も含め、なぜか三葉(さんよう)の松が多いのです。もっとも、松葉のデザインなんてこちらでは見たことないですが。


見にくくてすみません。枯葉の落ち葉ですが、確かに三葉でしょう?
2016年8月30日 Knoxville Ave, Lakewood CA



松葉は長いです。どれくらい長いかというと...測ってません、拾ってくればよかった...たぶん20cm かそれ以上あると思います。

そして、ここが特徴なのですが、松葉はピンとしてなくて、ちょっと垂れぎみです。
2016年8月30日 Knoxville Ave, Lakewood CA



この長くて少し垂れている松葉のせいで、全体的にモフモフした感じがすると思うのですが、いかがでしょう。
2016年8月30日 Knoxville Ave, Lakewood CA




幹は赤っぽい茶色で、こんな風に深くひび割れています。それから多くの幹で、根元近くが写真のように白っぽくなっているのです。何故かは、まだ知りません。
2016年8月30日 Niagara Ave, Lakewood CA



花と松かさは、あいにく季節が外れているのでいい写真がありません。

下は、落ちていたちょっと壊れた松かさです。
花のほうは、“Canary Island Pine Flower ” で画像検索で見ていただくといろいろ見られると思います。
2016年8月30日 Sybrandy Ave, Lakewood CA




本当にカナリー松なのか?

今までエントリーにしなかった理由として、冒頭にゴチャコチャ述べていますが、もちろんそれが本当なんですが、もう一つ漠然とした理由がありました。

つまり、こんなにあちこちに沢山ある木が、全部同じ種類なのかということです。

運転していて通り過ぎる松の木を、多分カナリー松だろうとは思いながらも、花とか、葉とか、松ぼっくりとか、ハッキリした見分け方のスタンダードを承知して眺めているわけでもなく、またそういう細かい見分けの指標は傍によってじっくり一本一本確認をしないと使えないのでできるわけもなく、なんとなく決着をつけないまま数年を過ごしていたというところです。

でも、しばらくその問題を熟慮した結果、自分にとってそれらしく見えれば、カナリー松だということに決めました。

理由は、場所が限られた都会の森であるからです。街路樹の情報を載せている各市のサイトには、カナリー松は常に植栽数の多い樹木の上位にランクされていますし、上位ランクの中によく似た形の他の種類があるわけでもありません。

カナリー松の以外の松の仲間では、イタリアン ストーン パインというのがもうちょっと下の方にランクされていますが、これは樹冠が丸い形をしているので、遠目にも間違うことはありません。

下の写真は、うちのベランダから見える、多分イタリアン ストーン パイン。カナリー松と姿が明らかに違うでしょう?
ただこの形の松は、似たのが他にもあるみたいなのでまだ確定できません。松ぼっくりが見つかって、その中に食べられる松の実が入っていたら本物。
2016年9月4日 Orange Ave Cypress CA



そんなこんなで、カナリー松の判定については、街路樹ウォッチャーとしての現実的判断は、“カナリー松のように見えればカナリー松とする” です。もちろん、数年間眺め続けて全体の雰囲気というトータルな指標を手に入れた上でのことです(自慢です)。

この木に愛着を感じるか?


私の勝手な思い込みなのですが、この細長い三角のカナリー松は、どうしても冬とか雪とか曇り空とかのイメージがくっ付いていました。

ここ南カリフォルニアはほとんどいつでも陽射しがきつくて眩しいのですが、そんな陽射しの下を、この松が街路樹として高く壁の様に続いている道を走ると、どうしてもそぐわない気がするのです。

私が冬や雪を連想するようになった元をたぐってみると、たぶん絵本とかテレビとかで育まれた、モミの木とかクリスマスツリーのような細長い三角形の樹木と、雪景色が繋がったイメージが出来上がっているからだと思います。

実際は、松の仲間は “陽樹” とされていて、つまり、鬱蒼と繁った暗い森では芽を出せず、他の木が育たないような荒地や山岳地、山火事の焼け跡など、陽当りだけは豊富な地面で芽を出しで育つのだそうです。また、気候も寒帯から熱帯にまで幅広く分布しているとのこと。


自分の認識の方を大いに変えなくてはならないのでした。実際のところ私は、自生の松が育つようなところに行ったことが無く、自分の経験から来る知識がまるで足りないのです。

松に限らずその他の針葉樹についても、同様に学ぶことがいっぱいありそうです。

そうしているうちに、このカナリー松にもっと愛着を感じるようになるかも知れません。それにしても、明日この木の街路樹の道路を走ったら、少しは違う気持ちがするかしら?


以上、カナリー アイランド パイン、カナリー松でした。